2018年5月17日
家づくりの目的は家族の幸せづくり
家づくりの目的は何でしょう。
住まい塾などでも、よくお聞きするのですが、きっかけを目的と混同している方も多く、家を建てることが目的になっている方も少なくないというのが正直な思いです。
家が狭いから・古いから・寒いから・結婚や出産・子どもの成長・親との同居・家賃がもったいない・金利や消費税等々、これらは、目的ではなく動機です。
そして、無理のない予算・使い勝手のいい間取り・お洒落な外観や内装・豪華なキッチンやバスといった要素もどういう家にしたいかという希望や要望であり、目的ではないはずです。
家づくりの目的は、夢や資産形成の実現や老後の安心など、人によって様々ですが、最大の目的は、やはり家族の幸せを実現することにあるのではないでしょうか。
そして、家族の幸せの源は何かといえば、日々健康に暮らすことが何より大事なことではないかと、私は思っています。
人は、誰でも病気になって寝込んだりすると、健康が一番と痛感するものですが、日々の暮らしの中で、どうしても忘れがちなのも健康です。
この健康という誰もが願う、一見当たり前のことをどこか忘れてしまい、予算や間取り・デザインや広さ・設備や素材といった部分を優先した家づくりを進めてしまっているユーザーが、非常に多いのです。
もちろん、予算や間取り・デザインなども、重要ではありますが、これらを満足させても、健康を左右する住み心地が悪いと、後々、様々なストレスや我慢を強いられ、結局は後悔するケースが多いのです。
日本で、健康の3大要素として、よく言われるのが、栄養・休養・運動です。
しかし、他の国々では、これらの他に、空気・水・陽光が、重要とされ、特に空気は何より先にあげられる大事な要素です。
一口に空気といっても、ピンとこない方も多いと思いますが、空気の清浄さ・室温や湿度、この全てのバリアのない家こそが、本物のバリアフリー住宅であり、私達の健康を支える一番重要な源となります。
なぜ、私がこんな話をするかと言えば、業界に長年身を置く、私も、家づくりの本来の目的を見失い、優先順位を間違い後悔した一人だったからです。
拙著では、前の家について、多少触れていますが、実をいうと、私は、これまで3軒の家を建てました。
そして、恥ずかしながら、20代で建てた1軒目も30代で建てた2軒目も、結局は失敗だったのです。
1軒目の家は、結婚を機に建てた親と住む二世帯住宅でしたが、限られた予算の中で、広さと間取りを重視した家づくりで、2軒目の家は、長女が小学校に上がる前に建てた家族4人の住む家でしたが、こちらも限られた予算の中で、外観や内装・設備や間取りを優先させてしまったのです。
どちらの家も、見栄えを優先させたので、見た目はそこそこで、他人から見ればいい家に見えるのですが、そこに住む人しか分からない、住み心地に関しては理想とはかけ離れた家でした。
しかし、かけ離れているとはいえ、そう感じるのは、省エネで快適な住み心地の家を知っている者だけであって、多少の寒さや暑さ・湿気や結露は、ある意味しようがないと思っている方が、非常に多いのも現実で、実に厄介な問題でもあるのです。
私とて、住み心地や健康と言った部分を、蔑ろにしたわけではなく、断熱に対しても、私なりに最低限、配慮したつもりでしたが、気密は、ほとんど考慮せず、結局は中途半端で、春や秋はともかく、冬や梅雨から夏にかけては、何かとストレスを感じながらの生活だったのです。
つまり、家づくりの優先順位を間違えると、広さや間取り・仕様をいくら吟味してお金をかけても、満足するのは初めのうちだけで、一番大事な住み心地の悪さで、後々後悔してしまうのです。
私の場合は、幸いにも、仕事上、不動産も扱っていることで、損失を最小限に抑えて、住み替えができましたが、正直いって一般のユーザーは、失敗したからといって、そう簡単には住み替えは困難ですので、何としても後悔しない家づくりを実現していただきたいのです。
よく、結婚生活は山あり谷ありで、楽しいことばかりでなく、辛い時や苦しい時もあると言われますが、家づくりも似ているものだと最近つくづく感じています。
家は、建てたら基本的に、一生住み続けなければなりません。
そして、日々めまぐるしく変わる気候の中、家の中で、人が心地よいと感じる期間は、そう長くはないのです。
結婚は、我慢できなければやり直しは可能ですが、家はそう簡単にはいかないのです。
断言できるのは、家の気密や断熱を蔑ろにしたり、ある程度とかそこそこにしては、絶対に住み心地のいい家にはならないということで、こうした家で住み心地を求めると、冷暖房や換気・除湿や加湿器などのイニシャルコストやランニングコストが膨大にかかるために、我慢するようになって、温度差のある暮らしを強いられ、暑さや寒さ・湿気によって、住む人の健康はもとより、家の耐久性までも阻害されてしまうのです。
理解していただきたいのが、屋根や外壁・内装や設備は、将来、やり直しや交換は可能ですが、住み心地や耐久性を左右するこ気密や断熱だけは、構造をスケルトンにしなければやり直しは出来ず、建替え以上にかかるこうした工事は現実的に無理なのです。
家の気密性や断熱性の低さによる、寒さや暑さは、体の丈夫な若いうちは、あまり気にならず、我慢や気力で乗り切ったり、冷暖房でも十分カバー出来るのですが、空気の汚れや部屋間の温度差や湿気は、徐々に身体の負担となり、年齢を重ねることでその影響は大きくなってくるのです。
また、子どもの成長に合わせ、家づくりを検討する方も多いのですが、免疫機能が発達していない乳幼児や小さなお子さんに与える空気と温熱の影響は、大人の何倍も大きいということを、真剣に考えて欲しいのです。
ナイチンゲールは、病気の回復を妨げるのも、健康な方が、病を引き起こすのも、その最大の原因は、空気の汚れと体の冷えであると、著書「看護覚え書」の中で説いています。
日本には、四季があり、朝晩の温度差も激しく、寒い日もあれば、暑い日もあり、湿気に悩まされる梅雨もあり、大雨や台風・時には大地震にも見舞われます。
そんな時でも、不安や不満・不快な思いを感じずに、家族の暮らしを守るストレスフリーの家が、本当のいい家ではないでしょうか。
また、私達は、寝不足や疲れなどから、よく体調を崩したりしますが、これらも室内の空気の影響が大きく、温度差を抑え、空気のきれいな家に暮らし、ぐっすり眠ることで、心身の疲れをいやし、自ずと免疫力も上がり、健康を守ってくれるのです。
そして、少ないエネルギーで、家中の温度差をなくし、きれいな空気に満たされた家を、これからの家づくりのスタンダードにしていくことは、家族の健康や老後の安心を叶えるばかりでなく、この国の抱える様々な問題の解消にもつながるのです。
これから家を建てようとしている皆様に、お伝えしたいのは、家づくりの一番の目的は家族の健康を守るということであり、その目的を叶えるには、家づくりの優先順位を間違いないことです。
何より優先しなければならないのは、その家の住み心地であり、人と建物の健康を守るための、空気環境と温熱環境で、見た目や広さはその次です。
そして、誰もが重視する予算にしても、見た目の建築費だけに捉われることなく、光熱費などのランニングコストやメンテナンス費用・将来の耐久性や資産価値にも目を向けた検討が必要なのです。
家は、いくら見栄えよく予算内に収まっても、気密や断熱・換気や冷暖房のバランスが悪いと、単に住み心地が悪いだけでなく、光熱費や医療費・生活費や家事労働費なども嵩み、結局は高くつくという認識が必要なのです。
特に、建築において、一番コストを削りやすいのも、気密や断熱・換気のコストで、一般のユーザーは、関心も低く・違いがわかりづらいために、結局は最高等級とかトップレベルという言葉だけを鵜呑みにしてしまい、知らないまま・知らされないままに家を求めてしまっているのです。
弊社で建てずとも、家づくりの目的は家族の幸せづくりということを念頭においた、家づくりを進めることが大事で、この順序さえ間違えなければ、家づくりの成功にぐっと近づきますので、是非、ご理解いただきたいと切に願います。
- 社員ブログ