2018年4月7日
熱橋(ヒートブリッジ)が及ぼす問題を解消するには
内断熱(充填断熱)の最大の欠点は、何といっても構造躯体そのものが、非断熱部分になるということで、室内と室外の温度差の激しい季節においては、熱橋(ヒートブリッジ)という文字どうり熱を伝える橋となります。
熱は、温度の高い所から低い所へ移動するのはご理解いただけると思います。
内断熱の場合は、木造であれ、ツーバイであれ、鉄骨であれ、構造部は、基本的には断熱材ではないので、おのずと非断熱部分(全体の20%前後)となり、熱橋の影響により熱損失が大きいものになります。
つまり、冬は、室内の熱を外へ逃がし、夏は外壁の裏側から、高温の熱を室内に侵入させるというわけです。
そして、熱橋は、住み心地の悪さや光熱費に影響を及ぼすわけですが、それより怖いのは、温度差によって発生する壁体内の結露であり、結露水が木材や断熱材を濡らし性能が低下し、構造材の腐朽や蟻害の誘発を招いてしまうのです。
また、長期間、熱の伝導により収縮と膨張を繰り返すことで、狂いや痩せ・割れといった構造の変形・毀損を招き、構造用金物のボルトも錆びたり緩んだりと劣化が進み、耐震性の低下にもつながるのです。
木造で、一般的に使用される木材は、無垢の乾燥材か集成材です。
無垢材の場合は、乾燥材でも18%~20%・集成材でも15%前後の含水率となります。
建築後、乾燥が進み、木材の含水率は10%以下に下がりますが、乾燥すれば、数ミリ程度の痩せが生じるのです。
痩せた部分には断熱材が入っておらず、言わば無断熱となり、断熱の欠損部となり、わずか数ミリの痩せでも、家全体でみるとかなりの部分が無断熱となり、さらに結露を助長させてしまうのです。
※ ハウスメーカーの営業マンは、多少の痩せは断熱材が追随するので、問題ありませんというようですが、そうしたデータも公表しておらず、リフォームの現場で壁の中を見る限り、そうした現場は、目にしたことはありません。
一昨年4月の熊本地震では、旧耐震の住宅のみならず、新耐震基準の住宅でも、半壊や全壊の被害を受けましたが、こうした経年劣化による、耐震性の低下も大きな要因となっています。
参考までに、主な建築材料や断熱材の熱伝導率を比較してみましょう。
<建築材料>
〇 杉・ヒノキ0.12W/mK
〇 軽量気泡コンクリート0.17W/mK
〇 コンクリート1.6W/mK
〇 鋼材53 W/(m K)W/mK)
<断熱材>
〇 グラスウール16K0.046 W/mK
〇 高性能グラスウール24K0.036W/mK
〇 吹き込み用グラスウールGW-1- 0.052 W/mK・30K相当 0.04 W/mK
〇 ロックウール0.038W/mK
〇 ポリスチレン3種0.028W/mK
〇 ソーラーサーキット断熱材0.024W/mK
鉄骨の熱電導率は大きすぎて、比較するまでもございませんが、断熱性がある程度有する木材でも、熱伝導率は0.12W/mKとなり、高性能グラスウールの3倍も熱伝導率が高く、同じ断熱性能にするには、30センチ以上の柱にしなければならず現実的ではありません。
つまり、内断熱の壁の中には、断熱材と性能の異なる木材が混合しており、様々な不具合が生じることは、ご理解いただけるのではないでしょうか。
その点、外断熱の場合は、構造まるごと断熱材で囲いますので、柱も熱橋にはならず、壁の中での結露が生じる危険性は、よほど無茶な暮らし方や過度な冷暖房をしない限り、結露の心配はなく、仮に万が一結露が生じても、空気層によって乾燥するという保険までついているのです。
木は生きているとよく言われますが、あなたが木になったつもりで想像してみて下さい。
冬、室内側が20℃で外が0℃だったとします。つまりお腹が20℃で背中が0℃ということです。
逆に、夏外壁の裏側が40℃で室内がエアコンをつけて27℃だったとします。今度は背中が40℃でお腹が27℃になるわけです。
そればかりか、断熱材に左右を囲まれ、内装材と構造用の耐力面材に前後を挟まれた状態が、何十年も続いたら、木の健康状態は維持できるでしょうか。
熱伝導率の高い鉄骨造とは違い、木造の場合は、熱橋の影響は少ないとされ、長年、見過ごされてきましたが、既存の住宅の壁の中の悲惨な状況を考えれば、いつまでも見過ごすわけにはいかないのではないでしょうか。
そして、構造材以外にも、熱橋の影響を一番受けやすい部分が、実はまだあるのですが、長くなりそうなので、後日、紹介させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
いずれにしても、熱橋が及ぼす様々な問題を根本から解決するには、家の断熱は外断熱にするのが、一番理に叶っているということをご理解いただければ幸いです。
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