2018年2月6日
C値(気密性能)が大事な理由①
なぜ私達が気密にこだわるのか?ご説明したいと思います。
※ 春から秋は、通気性にもこだわっているのが、ソーラーサーキットの家です。
それは、ズバリ!将来、大事な家が腐れてしまう可能性が大きいからです。
一般の方は、気密性が高いほど通気性が失われ、息もつまり、家にも悪そうな感じがすると思います。
確かに、昔の家の様に断熱材が入らない隙間だらけの住宅の場合は、通気性も良く、湿気や結露による腐朽よりも白アリによる食害の方が問題でした。
しかしながら、オイルショック以降、中途半端な気密化と断熱化が進み、床下や壁内・小屋裏に断熱材を充填する内断熱(充填断熱)の住宅では、日本独特の湿気の影響に加え、室内の水蒸気が壁体内に侵入することで、温度差による結露が発生するようになり、白あり被害もさることながら、構造材の結露による腐朽が多く見られるようになったのです。
そして、残念ながら、現在も、気密性を疎かにしている住宅が多く、内部結露の問題は解消されておらず、断熱性が益々高まる中で、逆に危険性が高まっていると言っても過言ではありません。
室内の水蒸気は、水蒸気分圧によって、寒い方へ移動する性質があるために、温度差のある壁体内に、水蒸気が侵入しないように、防湿フイルムで気密化を図らねばならないのです。
上記は、充填断熱の正しい気密施工の画像ですが、このように気密の重要性を認識し、現場に反映しているメーカーは、非常に少ないのが現実です。
このように、気密がいい加減だと目に見えない箇所で、内部結露が発生します。
露点温度のグラフです。壁体内に露点温度以下の箇所があれば、侵入した水蒸気は結露水に変化するのは必然です。
例えば、冬場の室内の温度を22℃・湿度50%としましょう。11.1℃が露点となり、11.1℃以下の箇所には、結露が発生します。湿度が50%でもこうなのですが、換気をけしたり、加湿機をつけたり、ファンヒーターをつけたり、洗濯物を室内干しをしたら、湿度はすぐ70%にも80%となり、露点温度は、15℃を上回り、窓ガラスはもちろん、温度の低い押入れや床下、壁の中ななど、いたるところで次々と結露が発生するのが、ご理解いただけると思います。
ガラスの結露は拭けば済みますが、水蒸気の粒子は10万分の2ミリで、微細ですので、ちょっとした隙間でもすり抜け、目に見えないところで、結露水となって、悪さをするという事を理解しなければならないのです。
一方、外断熱の気密化は、若干意味合いが違います。
外断熱は、構造の外側に断熱材を施工し、断熱材の外側で気密工事を施します。
外側で、気密と断熱の施工をすることで、これまで外部の影響を受けていた床下や壁の中・小屋裏が、室内側となるのです。
つまり、外断熱の気密化は、水蒸気が壁体に侵入するのを防ぐのが目的ではなく、外気側の温湿状況の影響を最小限にして、床下や壁や小屋裏の温度を室内に近い状況にするのが目的で、目に見えない部分を結露が発生する露点温度以下にしないための気密化ということをご理解下さい。
ここからが本題です。
省エネ意識の高まりから、ようやく一般的になりつつある高気密・高断熱住宅ですが、その歴史は非常に古く、今から35年以上も前に遡ります。
契機となったのが、家の断熱化にともなう室内外の温度差がもたらす内部結露によって、北海道で発生した「ナミダタケ事件」で、新築3年目の住宅の床下に大量のナミダタケが発生し、床が腐り落ちるという事件が発生しました。
こうした悲惨な被害は道内に拡がり、実に何万棟もの住宅が被害を受け、地元のマスコミでも取り上げられ大きな社会問題にもなりました。
原因は、壁内の結露水や床下の湿気が、グラスウールに吸収され、木材を濡らしたことにより発生したものと解り、単に断熱材を厚くするだけでは、暖かくならないばかりか、水蒸気が壁体内に侵入し、建物に重大な被害を及ぼすということが明らかとなったのです。
こうした教訓によって、ようやく高断熱化と高気密化がセットとして考えられるようになり、高気密・高断熱住宅が日本に誕生したのです。
しかしながら、本州の建築関係者の意識は低く、本物の高気密・高断熱の家づくりに取り組んでいる造り手は未だに少ないのが現実なのです。
これは、結露被害の深刻さや気密の重要性への認識が乏しい事が、最大の要因ですが、高気密化という、名前からくる偏見や誤解・拒否反応が、根強いものがあるのではないかと思います。
風通しが悪そう。息苦しくなりそう。シックハウスになりそう。中には子供の抵抗力が低下して、ひ弱に育つといった誤った考える方をしている方が、未だにいらっしゃるのは驚くばかりです。
その結果、中気密?で高断熱まがいのアンバランスで危険な住宅が現在もなお建てられ続けているのです。
また、気密工事は、非常に手間のかかる仕事で、職人さんの良心と技術が必要となり、工期と費用の問題もあり、目に見えない部分だけにどうしても疎かにされがちなのです。
温度差がもたらす結露は、断熱の不十分な住宅で、寒ければ寒いなりの、暑ければ暑いなりの生活を送っていた時代には、そう問題にはなりませんでした。
しかし、経済の発展にともない、私達の暮らしも、快適さと利便性を求め、冷暖房が当たり前となり、同時に省エネ性を求め、家の断熱化が進められ、サッシや断熱材が急速に普及し、室内の温度差から結露が生じ、窓ガラスのみならず、壁体内にも発生するようになったのです。
そして、結露については、ある意味しょうがないというかの様な場当たり的な対処が、現在も続いており、結露を防ぐというより、湿気や結露しても腐らない薬剤に頼った、ちぐはぐな家づくりが、進められているのが日本の家づくりの実態です。
ご存知のように防蟻工事の保証も5年が一般的です。また劣化対策として、防腐材を注入した木材が多く使用されておりますが、防腐薬剤の効果は何年なのか?結露に対してどこまで効果があるのか?健康被害はないのか?などの、検証は実質されていないのです。
これから、家を建てられる方は、家の高断熱化には、高気密が必須であり、気密を疎かにすると、内部結露によるナミダダケ事件の再来の危険性が十分考えられるということをご理解下さい。
何度か、ご紹介していますが、内部結露による住宅被害は、シロアリはもちろん、土台や柱の腐朽も、消費者の住まい方(暖房方法や換気・生活スタイル)にも関係しているので、一概に瑕疵や欠陥と認められず、瑕疵保険では保証されずあくまで自己責任となるのです。
昨今、ZEH推進の流れもあり、見た目の断熱性能を上げる家づくりが、増加しています。
さらに耐震性を向上させるために、柱の外側に構造用の面材を張る施工法が普及しており、壁体内の水蒸気はせき止められ、益々結露が発生しやすくなっているのです。
結果的に、結露に対しての対策は不十分であり、内部結露による被害が、将来起こる危険性が大きい家づくりが、進んでいるということをご理解いただければ幸いです。
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