2017年4月15日
坪単価のからくり
価格の安さを売りにしているローコストメーカーがありますが、その販売手法にはいろいろなカラクリがあります。
さすがに坪35万で家ができると思っているお客様はだいぶ少なくなりましたが、未だに誤解しているお客様もいらっしゃるようですので説明したいと思います。
まず、建築確認申請に用いる床面積といえば、延床面積ですが、建築業界においては面積表示の基準はあいまいで何の基準もないのが実情です。
そうした実情を利用して、ほとんどのローコストメーカーが採用しているのが、施工床面積という面積表示です。
施工床面積というのは、実際の室内の床部分にあたる面積ではなく、施工する部分の面積まで含む表示法で、どこまでの面積が含まれるかは、各社違うのですが、玄関ポーチやバルコニー・吹き抜けや小屋裏・一昔前までは、軒の面積まで含んだ面積を表示していた会社もありました。
つまり、施工床面積の場合は、最低でも実際の床面積よりも5%から10%は、大きい面積で表現しているため、実際の床面積が35坪でも建築費を算出する施工床面積は38坪から40坪になるのです。
そもそも坪単価というのは、あくまで建築費の目安の一つであって、建物の大きさや形状・設備や内外装の仕様によって大きく変るので、注文住宅の場合には、設計や仕様に基づいた見積もり書を作成し、はじかれた金額を床面積で割って坪当たり何万円の建物となるのです。
しかしローコストメーカーの場合は、あらかじめ坪単価の元となる設計基準・仕様・条件が細かく決められており、基準外の部分はすべてオプションや別途工事となります。
そして、基本的に追加や変更なくして住める家にはならないのです。
つまり坪単価〇〇万円は、あくまでお客様を呼び込むための入り口価格に過ぎず、住める状態になるには多額の追加工事が必ず必要で、結局は高くついてしまったというお客様が非常に多く、ローコスト住宅にトラブルや訴訟などが多いのはこうした理由が大きいのです。
次にメーターモジュールについても説明しましょう。
モジュールとは、柱のピッチ(間隔)の事を指し、通常の在来木造住宅の場合3尺(910㎜)ピッチが基本寸法となりますが、メーターモジュールの場合は1メートルが基本寸法となります。
ローコストメーカーの坪単価を算出している、設計基準のベースとなるのがメーターモジュールによる設計で多くのメーカーで採用しています。
すなわち、尺モジュールと比べ長さで1割長くなるために、床面積では全体で2割程増加します。
尺モジュールの6畳間は1.5間(2.73M)×2.0間(3.64M)で面積は9.94㎡となりますが、メーターモジュールの6畳間は3M×4Mで、面積は12㎡となり、面積は約20%増加するので、6畳が実質7.2畳大になります。
つまり尺モジュールで30坪の間取りをメーターモジュールに置き換えて建築すると36坪になり、40坪であれば48坪になるのです。
営業マンは、「メートル法が世界基準で、廊下や階段も広くなって、部屋もひとまわり大きくなるのでゆったり過ごせます。日本人の体型も大分変わりましたので」などと、もっともな話をすると思います。
しかし、住宅業界でメーターモジュールを採用した最大の目的は、見た目の坪単価の引き下げにあります。
同等の設備や仕様で建築した場合、40坪の建物より50坪の建物のほうが坪単価は安くなるのはご理解いただけるでしょうか。
40坪の建物でも、50坪の建物でも、二世帯住宅でもなければ玄関は一つですし、水回りの設備も一件分です。要するに建築費における比率が高い水道工事や設備機器の費用が面積が大きくなればなるほど割安となるのです。
こうした現象を最大限いかすのが住宅におけるメーターモジュール化なのです。
同じプランを、メーターモジュールで設計すれば、たとえ面積が広くなっても柱の本数・サッシや内部ドア・照明やコンセントの数・外壁や内装材で割高な出隅や入隅・コーナーに至るまで、基本的な数量は変わらないために、部材費はもちろん、施工費の増加を最小限に抑えることが可能となるのです。
しかし考えて欲しいのは、メーターモジュールでなくとも廊下や階段の寸法や部屋の広さは自由自在なわけで、あえてメーターモジュールにする必要はないのです。
しかもメーターモジュールの押入れやクローゼットの奥行は1m・トイレは2mというのが基本寸法となります。
さらにサッシやドア・ユニットバスやキッチンのメータモジュール対応の商品は割高で種類も限られているために、尺モジュール用の商品を使用し、わざわざ無駄なスペースをつくっているとしか思えない箇所が多々あります。(ユニットバスの周囲は約20㎝ものデッドスペースができます)
ちなみにメーターモジュールの会社に、尺モジュールに変更してくださいとリクエストしてみて下さい。
対応は難しく、もし対応したとしても坪単価は間違いなく大幅にアップします。
坪単価を安く見せつつも、面積を増やすことによって建築費をつりあげるメーターモジュールの家が世界基準といえるのでしょうか?
メーターモジュールなのに㎡単価ではなく坪単価で表記する事に、違和感を感じませんか?
最後に、本体工事以外の別途工事や付帯工事にどの位必要なのかをご説明いたしましょう。
会社によって、別途工事は様々ですが、ざっと別途工事になりえるものをあげてみましょう。
〇外部給排水工事 〇雨水排水工事 〇下水道接続工事 〇電気引き込み工事 〇仮設工事(電気・水道・トイレ)〇仮設足場工事〇2階トイレ・洗面所 〇勝手口 〇和室真壁仕様 〇一室を超える和室〇和室障子〇面格子や出窓〇網戸〇照明器具〇エアコン〇暖房器具〇カーテン工事 その他にも出隅や入隅の数・1階2階部分の面積比率・屋根勾配・軒の出・スイッチ・コンセントの数など少しでも基準をはずれると追加・変更工事が発生する仕組みになっています。
そして諸費用や諸経費にも、本来工事費に含まれるような費用が別途に計上されているケースが多いので注意が必要です。
〇地盤調査費用 〇気密検査費用 〇各種検査費用 〇工事管理費用 〇設計管理費用〇融資手続き費用 〇オール電化申請費 ※ 設計変更や仕様変更には変更手数料が発生するケースがよくあります。
こうした費用が、本体価格にプラスされる為に、あっという間に坪40万円はおろか50万円をゆうに超えてしまい、とてもローコストとは呼べない住宅も非常に多いのです。
さらにローコスト業界では、契約後の追加や変更工事で利益をさらに計上するかのような風潮もあり、追加工事を多くとることこそが腕の見せどころといったメーカーもありますので、注意しなければなりません。
加えて、最近では坪単価ではなく、20坪位の小さな建物で8百万とか、30坪弱の建物で1,200万といったように小さな面積で総額を低く表示する会社も出没してきましたが、こうした会社も別途工事や追加工事の考え方は、基本的に同じです。
坪単価のマジックや総額表示のからくりには、十分お気をつけ下さい。
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