2024年7月25日
夏場の床下結露は必然?
飽和水蒸気量について、理解している方々にとっては、ある意味常識とも言えるのが、梅雨から夏場にかけて発生する床下に発生する結露となり、業界誌でも頻繁に注意喚起がなされています。
特に、床下に断熱材を施工し、基礎パッキンや基礎換気口のある内断熱(充填断熱)の家では、立地条件やその年の気候条件によっても、まちまちですが、概ね年間30日~40日間くらいは、床下の断熱材や土台、基礎の耐圧コンクリート面に結露が発生していると言われています。
結露が発生する原因は、至って単純です。
温度が高く湿った空気が、基礎パッキンや基礎の換気口から、地熱で冷やされた床下に侵入し、床下の部材が、露点温度以下になることで、含むことの出来なくなった水蒸気が、結露になるというわけです。
県内の7月から8月にかけての床断熱の床下温度は、概ね22℃~25℃位になっていると思いますが、下の露点温度のグラフをみてわかるように、実に多くの条件下で、床下が露点温度に達してしまうことがお分かりいただけると思います。
※ 露点温度とは、わかりやすくいうと湿度が100%になり、空気中に含みきれなくなった水蒸気が結露として、表れてくる温度ということです。
夏の時期に、よくありがちな日中28℃で70%の空気でも、夜になって23℃とか24℃位に低下すると、湿度は90%を超えてしまい、冷やされて湿った空気が、床下から侵入し、夜間から早朝にかけ、床下に結露が発生しているケースも多々あるのです。
床下断熱の床下温度は、外気温と地熱の影響によって、変動が激しいのですが、夜間から早朝にかけては、温度も低下し、夜露や朝露のように、いとも簡単に結露が発生するというわけで、早朝に、植物の葉や雑草・車のフロントガラスやボデイーが濡れるのは、よく見る光景ですが、床下の結露もこうした現象と同じです。
外の場合は、陽が上がり温度も上昇する8時にもなると、完全に乾くのですが、床下の温度は、外気温が上昇しても、あまり変わらないために、なかなか乾かないのです。
運よく、風が吹き、日中乾いた空気が床下に通気され、結露が渇くケースもありますが、ほとんどの場合、常時結露が発生しており、家の建つ場所によっては、べた基礎の表面に、配管の漏水のような水たまりが、出来てしまう家も少なくないのが現実です。
特に、新築当初は基礎の水分が抜けきれずに、湿度は常に高めになっているため画像のような事態を招いてしまうのです。
特に、結露が発生しやすいのが、一番温度が低く、通気が一番損なわれる基礎の中央部分や基礎の立ち上がりが小さく区切られている水回りなどの部分となります。
それが故に、床下の断熱材は、湿気や水に強い発泡系の断熱材が主流となり、防腐や防蟻剤の注入された土台を初めとする床組部材や鋼製の束やプラ系の束が使われているのです。
こうした現象は、新築であっても、豪華なモデルハウスでも、必ず起こりえる現象だという認識が必要で、建てる前に、検討している依頼先の建物の床下や小屋裏を確認して下さいと言っているのはこうした理由です。
勇気のある方は、蒸し暑い日に、ご自身のお宅の床下を点検していただければ、かなり高い確率で結露が発生しているのがわかると思います。
一方で、基礎を外断熱にして、しっかり気密を確保すると、外部の温度変化の影響は少なく、常時、床下の温度は24℃~25℃に安定するので、この時期は、外気の侵入を遮断すれば、こうした床下の結露は解消されるというわけです。
しかし、基礎外断熱であっても、高湿になりやすいのが床下であり、床下の湿気対策を図る上でも、躯体内の通気や室内での湿度調整が必要になるというわけです。
こうした背景もあり、最近、床下断熱から、基礎断熱を採用する住宅会社が増加してきたのですが、単に床下断熱のデメリットを回避するために、安易に基礎断熱にすると、今度は、床下の温度は一年を通して一定になる反面、結露よりコワ~いシロアリ被害の危険性が高くなってしまうのが、家づくりの難しさであり、湿気や結露対策に加え、シロアリ対策も非常に重要な要素となってくるのです。
弊社のモデルハウスでは、地下スペースを設け、常時、床下の状態をオープンにしておりますが、床下断熱で、常時、床下を見せている内断熱の建物は、見た事も聞いたこともありません。
最近では、床下点検口として、必須の床下収納庫すら、あえて設置しないモデルハウスが多いようですがなぜでしょう?
家はどこから腐れるのか?シロアリはどこから侵入して食い荒らすのか?ということを考えれば、床下の環境は、非常に大事で、家の耐久性はもちろん、住み心地や健康にまで影響を及ぼすということをご理解下さい。
- 高橋一夫