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ナイチンゲールに学ぶ「空気のバリアフリー」

一般的にバリアフリー住宅とは、住宅内の段差を無くすことによって、高齢者や身障者の方々が、日常の生活に支障なく暮らせるよう配慮した住宅のことをいいますが、単に室内の段差を無くし、廊下や出入口の幅を広くし、手すりなどを設ければバリアフリー住宅と言えるのでしょうか。

もちろん、段差にも配慮は必要ですが、段差以上に怖いのが部屋間の温度差や結露・湿気であり、それらによって繁殖するカビやダニでもあります。

そして、これらを抑えるために、日々使用している消臭剤や防虫剤・柔軟剤などに含まれている化学物質で蔓延する室内の空気です。

何度か、紹介していますが、看護の母として誰もが知るナイチンゲールが150年以上も前に書いた著書「看護覚え書」の中で、病人の看護にとって何をさておいても一番大事なこととして、第一章「換気と保温」の真っ先に挙げているのが、

「患者が呼吸する空気を、患者の身体を冷やすことなく、屋外と同じ清潔さに保つこと」なのである。というものです。

そして、空気の汚れと体の冷えは、病気の回復を遅らせたり、悪化させたりするばかりでなく、健康な人にとっても重要で、病の半分は、空気の汚れと身体の冷えが引き起こすと説いているのです。

このナイチンゲールの教えを、そのまま現代に置き換えるのも、少々、無理があるかも知れませんが、室内空気の汚れによる、喘息やアトピー・シックハウスや化学物質過敏症患者の増加や、家の温度差によるヒートショックによって、多くの方々が心疾患や脳疾患に見舞われている現状を鑑みると、現代においても、空気の汚れや身体の冷えが病を引き起こしていると言っても過言ではないような気がします。

温度差のない、きれいな空気に満たされた室内環境の中で暮らし、身体を休め、良質な睡眠をとることで、自ずと免疫力が高まり、病気を予防し、健康で長生き出来るのです。

またこうした環境で暮らすことは、将来万が一介護を余儀なくされた場合、介護を受ける側にとっても、介護する側にとっても、暑さや寒さ・湿気や臭いなどによるストレスや負担を軽減してくれるのです。

皆さんは、病室の換気は、1時間に6回の換気量が定められているのをご存知でしょうか。

病室内の空気は、目には見えませんが、薬剤による化学物質や、人の出入りも多く、患者さんも汗や呼吸により有機物を発しており、体力や免疫力が低下している中、感染症などを防ぐために、常に新鮮な空気環境にする必要があるのです。

そして、空調によって、室内はもちろん、通路やトイレなども温度差がなく、一定の温度が保つことで、身体の冷えを抑えているのです。

これは、患者の身体への負担を出来るだけ軽減するのはもちろん、空気環境を整えることで、病気回復にとって何より重要な自然治癒力を高めるためになされているのです。

つまり、看護の法則である「換気と保温」は、すなわち健康の法則ともいえるのです。

段差のないバリアフリーに加え、温度や湿度・新鮮さのバリアのない住まいが、真のバリアフリ―住宅であり、ストレスフリーの暮らしが実現するのです。

空気がきれいで温度差のない空気のバリアフリー住宅がご家族とご自身の健康と大事な命を守るということを、是非ご理解いただきたいと思います。