2019年5月20日
ダンプネス(高湿度環境)の弊害を理解する
まだ梅雨入りは少々先ですが、人の健康においても建物の耐久性においても重要なポイントとなる湿気の話をしたいと思います。
ダンプネスという言葉は、あまり馴染みがないと思いますが、健康との関連性が強いということで、最近大分聞くようになりました。
ダンプネスは、1990年代頃から、欧米でよく議論されるようになった問題で、室内の高湿度環境のことを指す言葉です。
ダンプビルとかダンプハウスという表現をする方もおりますが、要は湿っぽくてジメジメしている状態の建物ということになります。
日本には梅雨があり、私たちは、昔から湿気に対して、ある程度の順応性はあるものの、梅雨から夏の時期は、体調を崩す方も多いと思います。
温暖化により、年々暑さも厳しくなり、もう少しすると熱中症のニュースが連日のように流れます。特に高齢者の熱中症は、家の中で発症するケースが一番多く、これは、暑さばかりでなく湿気の影響も大きいと言われています。
湿度が、70%を越えるようになると、上がれば上がるほど体感温度が上昇し、クールビズで推奨する28℃では、体感温度は、ゆうに30℃を超えてしまうので注意が必要です。
また、微生物や雑菌の活動も、活発になり、カビも発生し、カビを餌にするダニも一気に繁殖してしまいます。
こうしたカビやダニが、人の健康や建物の耐久性にも大きな影響を与えるのですが、特に、生きてるダニよりも、ダニの死骸やフンは、ほとんどのアレルギーに感作し、悪さしますので、出来るだけこの時期の繁殖を抑え、換気や除湿・日々の清掃を心掛けることが重要です。
また、室温や湿度が高くなることで、室内の建材や木材・家具・カーテンや電化製品などに含まている様々な化学物質や内装材やソファーなどの布製品に染み付いた臭い成分なども、揮発されやすくなるということも理解しなければなりません。
そして、考えるとキリがありませんが、人の汗も常在菌によって分解され、酸化による化学反応により、様々な化学物質を発生させています。
人は呼吸や汗によって、1時間に起きてる場合は、約100グラム・寝ている間でも50グラムの水蒸気を発しており、二日酔いなどのイやな臭いもアセトアルデヒドという立派な?化学物質で体内で生成されるのです。
こうして、この時期の室内の空気は、知らず知らずのうちに、1,000とも2,000とも言われる実に様々な汚染物質で蔓延されてしまい、家の中に入るとむっと感じる家が多いのは、こうした理由が大きいのです。
昨今のシックハウスは、カビや細菌といった微生物が由来する揮発性有機化合物「MVOC」によっても引き起こされ、喘息やアトピーなどのアレルギーの発症や悪化を招くということは、明らかになってきています。
しかし、病を発症しても、様々な要因が重なり、原因の特定は困難なことから、薬によって症状を抑えることしか出来ないのが現状です。
医療ジプシーやドクターショッピングと呼ばれるように、病院を何か所も変える患者さんが多いのも、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患です。
薬剤は、基本的に症状を抑えるためのものであり、一時的に症状が治まって薬をやめると、さらに大きなリバウンドとなってしまい、さらに強い薬が必要となり、副作用によって別の病を発症するケースも少なくありません。
結局、もとの原因と思われる要因を一つ一つ取り去ることが、重要で、住環境や生活スタイルを見直し、室内の空気質も改善しなければ、なかなか完治することは難しいのではないでしょうか。
昔は、夏になると家中の窓をあけていましたが、今では家にいてもおちおち窓も開けられない時代です。そして、中途半端に気密性が高まり、生活スタイルの変化や換気不足もあって、ダンプネス住宅は、戸建て・マンションとも、非常に増加しています。
ダンプネスをもたらす原因としてあげられるのが
〇 室内外の温度差による結露(冬と夏の壁体内結露も含む)
〇 石油ファンヒーターや過度な冷暖房
〇 換気や除湿不足
〇 洗濯物の室内干し
〇 消臭剤や芳香剤などの日用品
〇 冬の加湿器や室内の観葉植物
その他にも、水はけが悪かったり、風通しが悪い立地や、雨漏り・配管などの漏水などが挙げられますが、家の性能と暮らし方を変えるだけで、ダンプネスの状態は、ほとんど解消することか可能です。
問題なのは、家の中の湿度が高くなりすぎると、汚染物質の揮発とカビ臭で、消臭剤や芳香剤が必要となり、虫も寄りやすくなり、防虫剤や殺虫剤を多用したり、洗濯物の乾きも悪くなり、雑菌が繁殖し生渇きの嫌な臭いを抑えるために、必要以上の合成洗剤や柔軟剤を使うようになってしまうのです。
最近、香害が社会問題になりつつありますが、こうした日用品によっても、化学物質過敏症と思われる患者さんが年代問わず急増しており、学校や仕事はもちろん、普通の生活が送れないほど重症の方も少なくありません。
そして、湿気や結露によって、木材の腐朽菌やシロアリの蟻害を誘発してしまい、家そのものの耐久性も著しく低下してしまうという認識も必要です。
つまり、家のダンプネスは、負の連鎖による様々な悪循環を引き起こしてしまうのです。
冬の乾燥時期には、インフルエンザの予防や肌荒れ・喉の乾燥を防ぐための加湿対策が叫ばれますが、20℃の室内で湿度60%にすると、露点温度は12.3℃となり、普通の家では窓のみならず家のあちこちで結露が発生します。
ダンプネスがもたらす健康被害や環境破壊・建物の劣化も含めた経済的損失は、非常に大きく、建物内の空気の汚れによる経済損失は、外気汚染より遥かに大きいと厚労省でも注意喚起しています。
家の中を湿らせない・床下や壁の中・小屋裏を湿らせないということが、結果的に家の中の空気をキレイにして、病を予防し、住む人と建物の健康も守ることに繋がると思います。
気密と断熱性能を高め、出来るだけ冷暖房に頼らなくても、家の中の温度差を一定にして、換気や除湿を心がけ、冬期間でも40%前後・夏場でも60%前後に湿度をコントロールすることで、湿気や結露によるダンプネスはほぼ解消するということをご理解いただきたいと思います。
弊社では、ソーラーサーキットの家づくりを通して、空気のバリアフリーを目指し、ストレスフリーの暮らしを実現することで、人・建物・環境にもやさしい未来基準の家づくりに取り組んでいます。
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