2018年11月16日
冬の乾燥は必然です。
日々、様々な相談や質問をいただいておりますが、一番多いのが、高気密・高断熱の家は、冬場に乾燥するって本当ですかというものです。
嘘か本当かといえば、ある意味本当の話で、確かに乾燥すると感じる方も結構、いらっしゃいます。
私が、いつも感じているのは、高気密・高断熱が乾燥すると感じている方の多くは、
〇 水蒸気が発生するファンヒーターなど開放系暖房から、水蒸気の発生しないエアコンなどの暖房によって、室内の相対湿度が下がり乾燥感を感じる。
〇 新築すると、温湿計を置くようになり、30%台の湿度計を目にすると、無意識に乾燥していると感じてしまう。
〇 エアコンは、上から温風が出るので、顔に風を感じて乾燥感が強くなる。
〇 局所暖房や間欠暖房によって、つけ初めや、部屋を早く暖めようと温度設定を高くすると、風量が強くなり、余計に乾燥感が強くなる。
〇 24時間換気が機能していると、室内で発生する水蒸気も常時排出されるので乾燥感を感じる。
〇 これまでの小さな茶の間から、大きなリビングになり、生活で発生する水蒸気が分散し、乾燥感を感じる。
間違いなくこんな感じだと思います。
しかし、あまり室温を高くせずに、20℃前後の室温で、家中の温度差を2℃~3℃以内に抑えた暮らしに慣れると、ほとんどの皆さんは、気にならなくなり、快適に過ごしていらっしゃいます。
さて、冬の季節は、空気が乾燥して乾燥注意報が発令されますが、仙台管区気象台が乾燥注意報を発令する基準はお分かりでしょうか。
実効湿度65%で風速7m/s以上か、または実効湿度60%以下の日が3日続くと乾燥注意報が発令されます。
※ 実効湿度とは、3日前からの日中1時から2時位の平均湿度です。
案外、勘違いされている方も多いのですが、乾燥注意報は、空気が乾燥することで、火災の発生や延焼の危険の注意喚起を目的に出される注意報であって、インフルエンザやスキンケアのための注意報ではありません。
私達が、日常、湿度と呼んでいるのは、空気が水蒸気を含むことのできる量に対し、その時点で含んでいる水蒸気の量の割合(相対湿度という)を示したものですが、温度が高ければ高いほど含むことのできる水蒸気の量が大きくなります。
画像は、温度による飽和水蒸気量を表したグラフですが、ご覧の通り、20℃の空気には1立法あたり、17グラムの水蒸気を含む事が出来ますが、5℃の空気には6.8グラムほどの空気しか含むことができません。
つまり、温度は5℃で、乾燥注意報が発令される湿度が60%という場合、(6.8g×0.6=4.08)となり、1立法あたり、約4.1gの水蒸気を含んでいるということになります。
普通、湿度60%と聞いても、乾燥していると感じる人は少ないと思いますが、ラジオやテレビで、乾燥注意報が発令され、空気が乾燥してますので、インフルエンザにはご注意くださいとか、火の元にもご注意ください。
というアナウンスを聞くと「乾燥」という二文字が、頭にインプットされてしまい、室内の湿度計なんかみたら、随分乾燥している~となるわけです。
仮の話ですが、外気温5℃で湿度60%の空気を、そのまま一気に、室温20℃の家の中の空気と交換したら湿度はどうなるでしょう。
先ほど、説明した通り、5℃で湿度60%の空気の場合は(6.8×0.6)で約4.1グラムの水蒸気が含まれているので、17グラムの空気を含むことの出来る20℃の空気と入れ替えると、4.1÷17=0.241となり、室内の湿度は、一気に24%となるわけです。
※ この4.1グラムという空気中に含まれている水蒸気の量そのものを絶対湿度と呼びます。
実際は、人が生活しているので、呼吸や汗・炊事や洗濯・入浴などによって、多少湿度は上がり、30%~40%になります。
要するに、5℃で60%の水蒸気の量も、20℃で25%の水蒸気の量も、水蒸気の量(絶対湿度)そのものは、同じなわけで、室温が上がれば、湿度が低くなるという理解が必要なのです。
24時間換気によって新鮮な外気を常時室内に取り入れ、ファンヒーターなどは使用せずに、エアコンや床暖房など、水蒸気を発生しない暖房を使用する高断熱の家では、乾燥気味に感じるのは、ある意味必然となります。
多くの方は、ある程度の乾燥は、すぐに慣れて、良質な空気環境によって、カビやダニの発生を抑え、空気中に漂うハウスダストや室内に漂う化学物質を常時、排気することで、アトピーやアレルギー・喘息などの症状も、改善するというわけです。
もちろん、喉の弱い方やインフルエンザの予防を図るためにも、ある程度の湿度はキープしたいというのも当然の話で、室温20℃・湿度40%を一つの目安として心がけていただきたいと思います。
最近は大分お洒落な加湿器がいろいろ売られているようで、上手な加湿器の利用をおすすめしたいのですが、コントロールが難しく、水の補給や掃除なども大変なのも現実で、我が家では、冬の相対湿度は35%前後ですが、加湿器はほとんど使わなくなりました。
乾燥が気になる方は、冬期間の洗濯物の室内干しも加湿対策には役立ちますし、濡れたタオルをかけたり、観葉植物に水をやるなど、お客様の暮らしに合わせいろいろ工夫してみてはいかがでしょうか!
また、内装に塗り壁やエコカラットなどを採用しているお客様は、壁に霧吹きで水分を含ませたりするのも効果があり、玄関や和室前の土間部分に水を撒いたりしてもOKです。
いろいろな工夫をしながら、その家なりの暮らし方を楽しむのも、高断熱の家に住む楽しみのひとつでもありますので、暮らしの達人!目指してチャレンジしてみて下さい。
そして、よくテレビやラジオなどで、インフルエンザの予防のために、湿度60%が望ましいというようなことをいう方がおりますが、かなりピントがはずれた話ですので間に受けると大変なことになるので、注意が必要です。
閉め切った部屋ならいざ知らず、冬期間において、高断熱の家で60%の湿度をキープするには、何台もの加湿器を常時運転させなければならず非現実的です。
インフルエンザに家族が罹患した場合は、感染を防ぐために、ある程度の加湿は必要かもしれませんが、インフルエンザに初めに感染するのは、大抵は外で潜伏時間を経て家で発症するので、家の中で罹患するわけではないのです。
そして、乾燥より怖いのは結露やカビの問題です。
室温20℃で湿度60%にしたとすると、露点温度は12.3℃になり非暖房室や目に見えない壁体内の12.3℃以下の部分では必ず結露が発生するのです。
そうした状態で、洗濯物を干したりしたら、すぐ湿度は80%にも90%にもなることで、露点温度も、高くなり、大半の家では、家中が結露だらけでカビも発生し、カビ取り剤や消臭剤・防虫剤など、多用するようになり、インフルエンザの予防どころではなくなってしまいます。
もちろん、高性能な家では、7℃も8℃も温度差は出ないので大丈夫ともいえますが、換気を消したり、閉め切った部屋に洗濯物を干したりして、湿度が高く場合や、外の冷え込みが厳しいような場合には、結露がうっすら発生するケースもございます。
結露は、含むことの出来なくなった水蒸気が水に変わる現象で、簡単にいえば湿度100%ということです。湿度を上げれば上げるほど結露の発生する露点温度も高くなりますのでご注意ください。
インフルエンザのウイルスは、空気感染しません。(飛沫感染はします)手洗いやうがいを励行して、空気の綺麗な温度差のない家で暮らすことで、基礎体温も上昇し、ぐっすり眠たれることで、自然と免疫力も高まり、そうそうインフルエンザには感染しないのです。
喉が乾燥するという方は、飴を口に入れたり、適時水分を補給いていただき、お肌の乾燥が気になる方は、保湿クリームなどで対応していただければOKです。
余談ですが、お医者さんや看護師さんは、常にお茶や水を飲んで、インフルエンザのウイルスを胃に落とし込んで、感染を防いでいます。
窓や押入れに結露している家は、床下や壁の中・小屋裏でも、内部結露している可能性が高い家でもあるのです。
省エネで快適に暮らすのはもちろん、人の健康や建物の腐朽や蟻害を招く、悪の根源である結露を防ぐためにも、冬は40%・夏は60%前後にコントロールすることが、非常に重要となりますので、ご理解下さい。
※ 先日も紹介しましたが、部屋を閉めきって、ファンヒーターで暖房し、家干しをして、換気を疎かにするというのが、最悪のパターンとなりますので、くれぐれもご注意ください。
- 社員ブログ