2018年8月14日
家の良し悪しを見極める確かな目をもつ
現在の住宅市場は、20代・30代の一次取得層が中心となっており、住宅業界では、若い世代の方々をターゲットにした営業展開を図っています。
若い世代の方々は、現在支払っている家賃を無駄と考えており、この国の将来の不安もあって、出来るだけ早い時期にマイホームを取得したいと考えている方々が非常に多く、家賃以下あるいは家賃並みで買える物件にと目がいきがちです。
一方、売り手側もこうした顧客心理をよく理解しており、さも若い世代の家づくり応援団かのようなセールストークを巧みに用いて購入を誘導します。
住宅ローンに縛られた生活は、物価上昇や教育費が上昇する中、趣味や娯楽まで制限され、不幸な生活になってしまうといった、若い世代の方々の共感を得られるような説明をするのが一般的で、低価格・高品質を打ち出した営業戦略です。
こうした、ある意味、堅実ともいえる考え方そのものは、あながち間違ってはいないのですが、ことマイホームとなれば、基本的にその家に一生暮らす訳で、気に入らないからといって、賃貸の様に住み替えることは出来ないということを十分に理解した上での判断が必要なのです。
家は、住宅ローンの他に、固定資産税や都市計画税・修繕費やメンテナンス費用など、目に見えないコストも考慮しなければなりません。
特に、住んでみないとわからない住み心地やその家の光熱費、使い勝手や子どもの成長や家族が増えた場合の収納スペース、家の耐震性や耐久性・将来の資産価値・借入先の選定やローン種別の検討など、勉強しなければならないことは山ほどあります。
そして、人生100年時代とも言われる中、家のローン返済が終わる30年後・35年後以降も、その家で、健康に暮らし続けられるかどうかをリアルに考えなければなりません。
身体が丈夫で健康な若い世代の方は、多少の寒さや暑さ・湿気は、不快なだけで、健康への影響も少ないのは事実で、気力や体力で乗り切れますが、人間誰しもが年老いていくのは必然で、免疫が低下する老後のことも考えなければならないのです。
現在、日本の住宅の耐用年数は、30年にも満たず、解体される住宅の築年数は、平均で27年前後です。
今の新築は、40年も50年も持つのではと思っている方も多いのですが、現代の住宅の造り方も従来の延長線であり、中途半端な断熱化とユーザー側の間違った暮らしによって、これまで以上に短命になる危険性を孕んでいるという認識が必要なのです。
人口減少が進む中、土地という資産価値の上昇は見込めず、年金の削減や支給年齢の繰り下げなどを鑑みれば、将来の大規模改修や建て替えなどは、よほど恵まれた方でなければ不可能です。
こうした話をすると、マイホームを検討している方に、水を差す様で恐縮ではありますが、単に見た目の良さや価格だけで、マイホームを取得した方々は、後々、数多くの不満や我慢・ストレスを感じながらの生活を強いられるケースが多く、様々な病を引き起こし、時には家庭崩壊を招いてしまうこともあるということを理解する必要があります。
予算や毎月の支払額は、非常に重要な要素ですが、ここから家づくりを検討すると、大事な部分がどうしても見えなくなり、優先順位を見誤ってしまうのが家づくりの怖いところなのです。
安価でしかも省エネで快適に健康な暮らしが送れ、地震に強く長持ちする家は、基本的にはありえない話で、肝心な要となる温熱環境と空気環境は、疎かな住宅になってしまうのです。
マイホームの購入は、家の良し悪しや性能の違い・35年後も快適に住み続けられる家なのかどうかを見極める知識と目を養ってからでも遅くはなく、そんなに面倒なことでもありません。
寒い冬や、梅雨から夏にかけて、目に見えない床下や壁の中・小屋裏の温度や湿度がどうなるか考えればいいだけです。
家は、生涯で一番高い買い物であり、一生一代の大事業でもあるということをご理解いただき、家づくりを進めていただきたいと思います。
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