2018年6月1日
30年後を考えた家づくりを
現在の住宅市場は、20代・30代の一次取得層が中心となっており、住宅業界では、若い世代の方々をターゲットにした営業展開を図っています。
若い世代の方々は、現在支払っている家賃を無駄と考えている傾向が強く、この国の将来の不安もあって、出来るだけ早い時期にマイホームを取得したいと家賃以下あるいは家賃並みで買える物件にと目がいきがちです。
一方、売り手側もこうした顧客心理をよく理解しており、若い世代の家づくり応援団かのようなセールストークを巧みに用いて購入を誘導します。
住宅ローンに縛られた生活は、物価上昇や教育費が上昇する中、趣味や娯楽まで制限され、不幸な生活を強いられるので、無理のない支払いが何よりです。というように若い世代の方々の共感を得られるような説明をするのが一般的で、低価格・高品質を打ち出した営業展開が図られています。
こうした、ある意味、堅実ともいえる考え方そのものは、あながち間違ってはいないのですが、ことマイホームとなれば、基本的にその家に一生暮らす訳で、気に入らないからといって、賃貸の様に住み替えることは出来ないということを十分に理解した上での判断が必要なのです。
そして、人生100年時代とも言われる中、家のローン返済が終わる30年後・35年後以降も、その家で、暮らし続けられるかどうかをリアルに考えなければなりません。
身体が丈夫で健康なうちは、多少の寒さや暑さ・家の温度差や空気の汚れは、健康に、すぐさま直結する問題ではありませんが、人間誰しもが年老いていくのは必然ですので、免疫力が低下する老後のことも考えなければならないのです。
現在、日本の住宅の耐用年数は、30年にも満たず、解体される住宅の築年数は、平均で27年前後です。
今の新築は、40年も50年も持つのではと思っている方も多いのですが、現代の住宅も、従来の延長線であり、中途半端な断熱化によって、温度差が生じてしまい、構造そのものが、湿気や結露で蝕まれ、これまで以上に短命になる危険性を孕んでいるという認識が必要なのです。
人口減少が進む中、土地という資産価値の上昇は見込めず、年金の削減や支給年齢の繰り下げなどを鑑みれば、将来の建て替えなどは、よほど恵まれた方でなければ困難です。
つまり、これまでのスクラップ&ビルドという壊しては建てるというこの国の家づくりのあり方は通用しない時代であり、いい家を造って、キチンと手入れをして、家を長持ちさせ、老後はもちろん、子や孫の世代に引き継げる長寿命の家づくりが必要なのです。
こうした話をすると、マイホームを検討している方に、水を差す様で恐縮ではありますが、単に見た目や価格だけで、マイホームを取得した方々は、後々、光熱費の負担にくわえ、寒さや暑さ・湿気や結露で、多くの不満や我慢・ストレスを感じながらの生活を強いられるケースが多く、健康を害したり、家庭不和を招いてしまうこともあるということを理解する必要があります。
予算や毎月の支払額は、非常に重要な要素ですが、ここから家づくりを検討すると、大事な部分がどうしても見えなくなり、優先順位を見誤ってしまうのが家づくりの怖いところなのです。
家は、住宅ローンの他に、毎月の光熱費はもちろん、固定資産税や都市計画税・修繕費やメンテナンス費用など、目に見えないコストも考慮しなければなりません。
特に、住んでみないとわからない住み心地や家事導線・収納スペース、家の耐震性や耐久性・将来の資産価値・借入先の選定など、様々検討しなければなりません。
価格が安くて、光熱費や維持費もかからず、快適に健康な暮らしが送れ、地震に強く長持ちする家は、基本的にありえず、どうしても、温熱環境と空気環境が疎かな住宅になってしまうのです。
その結果、住宅ローンは抑えられたとしても、光熱費や医療費・生活費の負担が増え、トータルコストを見ると、逆に高くついてしまうローコスト住宅は少なくないのです。
マイホームの購入は、家の良し悪しや性能の違い・35年後も快適に住み続けられる家なのかどうかを見極める知識と目を養ってからでも遅くはありません。
家は、生涯で一番高い買い物であり、一生一代の大事業でもあるということをご理解いただき、後悔しない家づくりを進めていただきたいと思います。
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