2021年1月8日
「ソーラーサーキットの家」の誕生秘話Ⅰ
日本の住宅の平均寿命はわずか30年足らずですが、神社・仏閣ならずとも建築後100年以上経過しても現存する木造建築物は数多く存在しています。
長持ちしている建物の共通点を突きつめれば答えはただ一つ!
断熱材がないということです。
断熱材がないということは、もちろん冬は猛烈に寒いのですが、木は乾燥した状態を保つので腐れないという単純な話で、通気性を重視して、「住まいは夏を旨とすべし」という発想で造られた昔の家はけっこう長持ちしたのです。
木は湿気・結露・雨漏れを防ぎその乾燥状態を保てば長持ちするというのは、誰でも分かる常識です。
しかしながら、1970年代のオイルショック以降、アルミサッシや断熱材の普及により、中途半端な断熱化と気密化が一気に進み、同時に私達の生活も快適性を求めて家の中と外の間に大きな温度差をつくってしまう暖房が当たり前になりました。
その結果、目に見えない内部結露が進み、通気性が失われた構造内部の木材の腐朽やさらには蟻害によって、日本の住まいは短命となったのです。
平成21年6月に、政府の200年住宅ビジョンに沿って「長期優良住宅の促進に関する法律」が制定されました。
この法律は、地球環境を守り国民の豊かな生活を実現するために、これから建てる家に、構造躯体等の劣化対策・耐震性・可変性・維持管理・更新の容易性・高齢者等対策・省エネルギー対策・一定以上の住宅規模・及び良好な景観の形成への配慮等を定めています。
住宅に求められている性能は6つですが、最も重要と思われる性能をあげると次の性能となります。
〇耐震性が高い住宅 〇断熱性が高い住宅 〇耐久性が高い(経年変化が少ない)
これら、一つ一つの性能を高める事は簡単に出来るのですが、日々安心して暮らすことができる住宅として、相互に影響しあうこの3つの性能を最適な形で組み合わせ、長持ちさせることは、簡単なようで実に困難な問題なのです。
通常、この難題を解決しようとすると、湿気や結露でも腐らず、シロアリの被害を受けない、薬剤や防腐材に頼る方法が現実的に採用しやすく、長期優良住宅においても構造躯体等の劣化対策として防蟻・防腐薬剤の使用が定められています。
しかし、薬剤や防腐材の効果は何年維持できるのでしょう。住む人の健康への影響はないのでしょうか?
そんな不安や疑問を解消したのが、ソーラーサーキットなのです。
ソーラーサーキットは、薬剤や防腐剤だけに頼ることなく
〇耐震性 〇断熱性 〇耐久性
という3つの性能を最適に組み合わせ、両立するという難題を外断熱工法に「通気性」という機能を加えることで見事に解決しているのです。
この通気性を構造の中に持たせることで、耐久性に関わる構造躯体の乾燥状態の維持が可能となります。結果、耐震性も長期に保持されます。
一方、寒い冬に通気性を求めれば、、断熱性は著しく低下し、内部結露の危険性も高まります。
つまり、通気性を確保しつつも、季節に応じてその通気性のON・OFFの切り替えが重要になります。
この通気性のON・OFF機能がソーラーサーキットの要となる『家が衣替えする』技術なのです。
このシンプルな独自技術が誕生したのは1988年のことでした。
当時ソーラーサーキットの家を開発した㈱カネカの開発スタッフの面々は前述の長持ちする家造りの難題にも似たもう一つの場面に直面していたのです。
- 高橋一夫