2018年5月5日
乾燥より怖いダンプネス
ダンプネスという言葉は、あまり馴染みがないと思いますが、室内環境と健康との関連性が強いということで、最近大分目にするようになりました。
ダンプネスは、1990年代頃から、欧米でよく議論されるようになった問題で、室内の高湿度環境のことを指す言葉です。
ダンプビルとかダンプハウスという表現をする方もおりますが、要は湿っぽくてジメジメしている状態の建物ということになります。
画像は、ダイソンさんの商品プレゼン時のデータですが、ダンプネスがもたらす健康への影響についてのエビデンスも大分紹介されるようになりました。
※ 私もダイソンユーザーです。
日本人は、昔から湿気に対して、ある程度の順応性はあるものの、梅雨から夏の時期は、体調を崩す方も多いと思います。湿度が70%から80%を越えるようになると、微生物の活動が、活発になり、カビも発生し、カビを餌にするダニが繁殖してしまいます。
こうしたカビやダニが、人の健康や建物の耐久性にも大きな影響を与えてしまうのですが、特にダニの死骸やフンは、アレルギーの一番の原因になるので、出来るだけ繁殖を抑え、日々の清掃を心掛けることが重要です。
また、室温や湿度が高くなることで、室内の建材や家具・カーテンに含まれるVOC(揮発性有機化合物)や壁や床・ソファーなどの布製品に染み付いた臭い成分なども、揮発されやすくなるのということも理解しなければなりません。
余談ではありますが、人は、呼吸や汗によって、1時間に起きてる場合は、約100グラム・寝ている間でも50グラムの水蒸気を発しています。
そして、汗もまた常在菌によって分解されたり、酸化による化学反応によって、汚染物質を発生させているのです。
こうして、室内の空気は、知らず知らずのうちに、様々な汚染物質で蔓延されてしまうわけですが、昨今のシックハウスは、カビや細菌といった微生物が由来する揮発性有機化合物「MVOC」によって引き起こされ、喘息やアトピーなどのアレルギーの発症率も高まることが、明らかになっているのです。
しかし、病を発症しても、様々な要因が重なり、原因の特定は困難なことから、薬によって症状を抑えることしか出来ないのが現状で、医療ジプシーと呼ばれる病院を何か所も変える患者が多いのも、アレルギー症状と言われています。
結局は、もとの原因と思われる要因を一つ一つ取り去ることが、重要で、住環境や生活スタイルを見直し、室内の空気質そのものを、改善しなければ、なかなか完治することは難しいのではないでしょうか。
昨日、換気量について説明させていただきましたが、今日の住宅は、生活スタイルの変化や換気不足もあって、ダンプネス住宅は、戸建て・マンションとも、非常に増加しています。
ダンプネスをもたらす原因としてあげられるのが
〇 室内外の温度差による結露(冬と夏の壁体内結露も含む)
〇 石油ファンヒーターや過度な冷暖房
〇 換気不足や清掃の悪さ
〇 大量の洗濯物の室内干し
〇 加湿器や観葉植物
その他にも、水はけが悪かったり、風通しが悪い立地や、雨漏り・配管などの漏水などが挙げられますが、家の性能と暮らし方を変えるだけで、ダンプネスの状態は、ほとんど解消することか可能です。
問題なのは、家の中の湿度が高くなりすぎると、家の中は、汚染物質の揮発とカビ臭で、消臭剤や芳香剤・防虫剤や殺虫剤を多用したり、汗を抑えるための制汗剤や香水・洗濯物の乾きも悪くなり、雑菌が繁殖し生渇きの嫌な臭いを抑えるために、必要以上の合成洗剤や柔軟剤を使うようになってしまうのです。
最近、香害が社会問題になりつつありますが、こうした日用品によっても、化学物質過敏症の患者が、急増し、医療費の増加にもつながるのです。
ダンプネスは、負の連鎖による様々な悪循環を引き起こしてしまうのです。
さらに、湿気や結露によって、木材の腐朽菌やシロアリの蟻害を誘発してしまい、家そのものの耐久性も著しく低下してしまうという認識も必要です。
冬の乾燥時期には、インフルエンザの予防や肌荒れ・喉の乾燥を防ぐための加湿対策が、とかく叫ばれますが、ダンプネスがもたらす健康被害や環境破壊・建物の劣化も含めた経済的損失は、遥かに大きいのです。
家の中を湿らせない・床下や壁の中・小屋裏を湿らせないということが、住む人と建物の健康をいつまでも守るのです。
気密と断熱性能を高め、過度な冷暖房を控えつつ、家の中の温度差をなくし、換気や除湿を心がけ、冬期間でも40%前後・夏場でも60%前後に湿度をコントロールすることで、湿気や結露によるダンプネスは解消するということをご理解いただきたいと思います。
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