2021年1月30日
内部結露は、体内に潜むがん細胞?
日経ホームビルダーの「100の失敗に学ぶ結露完全解決」という業者向けのマニュアル本です。
一般的に結露というと、窓枠やガラス面・玄関ドアや寒い部屋の押入れの壁などに、発生する表面結露を思い浮かべると思います。
表面結露は、面倒なものの、とりあえず拭いたり、暖めたり、乾かしたりすれば、一時的に解消します。
また、新築時には、窓の性能を上げたり、暖房器具や換気に気を付けて、湿度のコントロールと温度差のない住まい方をすれば、表面結露のない家にするのは、そう難しくはありません。
しかし、一番大きな問題は、床下や壁の中・小屋裏などの目に見えない部分で、発生する内部結露です。
うちは、窓の結露がないから大丈夫というわけではなく、多くの建物では目に見えない部分で、結露が発生しているのです。
内部結露は、断熱材や木材・建築金物を濡らすことで、断熱や耐震性能の低下はもちろんのこと、カビや錆びの原因となり、木材の腐朽やシロアリを招き寄せやすくなり、知らず知らずの内に建物の寿命を短命にする、建物内に潜むがん細胞みたいなもので、まさしく悪の根源とも言える存在です。
日本の住宅の耐久性が、欧米と比べ極端に低いのは、梅雨や長雨の影響もありますが、内部結露によって家が腐れるからと言っても過言ではないのです。
何度か、ご説明していますが、水蒸気は多い所から少ない所へ移動する性質があり、冬は室内から外へ、夏は、外から室内へ移動する力が働きます。
水蒸気の粒子は10万分の2ミリと超微細で、ちょっとした隙間はもちろん、ガラスや金属以外の建築資材そのものも、透湿します。
ゆえに、気密フィルムなどを壁内部に張り巡らせ、水蒸気が壁体内へ侵入しないように気密工事が必要になるのです。
そして、内部結露は冬ばかりでなく、湿気の多い夏場にも発生するという認識が必要なのですが、夏場は逆にこの気密フイルムが邪魔をして、外から侵入する水蒸気をせき止めて、エアコンなどで室内を冷やすことで、逆転結露という内部結露が発生する場合があるので、とても厄介なのです。
また、床下に断熱施工して、基礎外周部に基礎パッキンを施工する建物では、外の高湿度の空気が、床下に入り込むことで、地熱により冷やされた床下に結露が発生してしまうのです。
特に夏場の内部結露による被害は、カビや腐朽菌が繁殖しやすく非常に怖いのです。
そして、壁体内が、カビだらけの状態の中で、家の中は常にカビ臭が漂い、アレルギーの発症や悪化を招き、さらに消臭剤や芳香剤・防虫剤を多用することで、シックハウスや化学物質過敏症を引き起こす可能性も生じることもあるのです。
特に、昨今の住宅は、中途半端に気密性や断熱性が高まり、冷暖房の普及や換気に対しての意識も薄いことから、こうした内部結露による住宅被害や健康被害は大きな問題になっているのです。
現代の住宅の内部結露に対しての対策は、結露を発生させないというものではなく、結露しても、腐らない防腐剤や防カビ剤・防蟻剤を注入したり、湿気を排出しやすくするというのが、一般的で、薬剤の効果が何年もつのか?薬剤による健康への影響はどうなのかというのは、正直誰も分からないというのが現実です。
業界内でも、結露に対しての認識は、まだまだ低く、たかが結露という考えも根強く、結露対策が、十分なされている造り手の選択が重要なのです。
結露のよる被害は、住む人の生活の仕方にも起因する要素があるので、一概に欠陥住宅とも言えず、瑕疵担保保険でも保証対象外になっているために、結露被害は、ほとんど表面化しませんが、水面下では大きな問題となっており、画像の様なテキストが、業者向けに販売されているのです。
本の内容を抜粋すると
「断熱・気密のミスを徹底分析」
‐換気やカビなど最新問題を網羅、新設でも改修でも役に立ちます‐
高断熱・高気密をうたった住宅で、結露が多発しています。高断熱・高気密住宅の結露は表から見える箇所ばかりでなく、壁内や床下、小屋裏など見えにくいところで発生するので、より深刻な影響をもたらします。結露の原因の多くは、設計や施工ミスです。本書では、高断熱・高気密住宅で実際に発生した100の結露やカビなどのトラブルを部位別、テーマ別に分類して、トラブルの原因と対策を分かりやすく解説します。結露対策の決定版となる1冊です。
目次
第1章 結露を招く断熱ミス
床下、床・天井、浴室・玄関、窓、窓・軒天、軒天・壁、壁、小屋裏・屋根、小屋裏
第2章 換気の失敗
第3章 カビのトラブル
第4章 注目すべき隙間対策
第5章 失敗しない断熱改修
結露対策は、簡単なようで難しく、設計者や現場管理者のみならず現場に携わる全ての業者の職人さんの正しい理解に基づいた施工なくして解消することはありません。
そして、お客様自身も、造り手の高気密・高断熱・計画換気があるから大丈夫ですとか。ファンヒーターを使わなければ問題ありませんとか。透湿シートで外部へ排出します。という言葉を鵜呑みにすることなく、結露に対しての正しい知識を持って生活することも重要なのです。
拙著、「外断熱が家族を守る」には、結露のメカニズムや対策・正しい暮らし方などについても紹介しています。
あまり楽しい話ではありませんが、お客様自身の理解と生活の工夫なくして、本当にいい家は出出来ません。
住まい塾でも、分かりやすく説明していますので、関心のある方はお気軽にお申し付け下さい。
- 高橋一夫