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新築住宅で新たなシックハウスが急増している理由

日本で、家の断熱が一番進んでいる北海道の社団法人「北海道住宅リフォームリフォームセンター」のグラフで、気密性能の違いによる3種換気の給気量を示したものです。

住宅の気密性能の良し悪しが、換気性能に大きな影響を及ぼすことはいつもお伝えしておりますが、ご覧の通り、例えC値(隙間相当面積)が、レベルの高いとされる1.0であっても、給気口からは、排気量の50%しか給気されず、C値が低下すればするほど給気量も低下し、C値が3.0を越えるとわずか20%に低下するのがおわかりになると思います。

建物の必要な換気量の計算は、あくまで排気量をベースにした基準になっているために、自然給気の3種換気の場合には、こうしたミスマッチな現象が生まれるのですが、研究者や専門家の間では、3種換気を用いて、換気を有効に働かせるには、C値は0.5以下が必須とされており、北海道の住宅会社では、気密性能を重視した家造りがある意味常識です。

しかし、宮城県の住宅会社で、3種換気を採用している造り手の多くは、気密や換気に対しての理解は乏しく、気密検査も実施しない名ばかりの高気密・高断熱住宅がほとんどで、義務化になったから、単に換気システムをつけているというのが実状で、低コストで設置できる3種換気が、今でも多いのです。

また、ユーザー側も、従来の家には換気と言えば、キッチンやトイレ・浴室にしかなかったこともあり、換気に対してはあまり関心がなく、本来、健康に暮らすためにも、室内の空気は重要なのですが、換気に対しての正しい情報は、知らないまま・知らされないままに、家を求めてしまっているのです。

結果的に、現在、建てられている住宅の80%以上は、必要な給気量の半分も満たしていないのが現状で、いくら建材に気をつけても、アレルギーやシックハウスは増加を続け、最近では、換気不良がもたらす臭いを解消するための、消臭剤や芳香剤・柔軟剤や防虫剤の使用による香害が、大きな社会問題になり、ニオイを解消するための生活用品による香りの被害という負の連鎖を招いているのです。

3種換気は、自然給気・機械排気という換気方式で、機械で排気した分の空気を給気口から給気するものですが、気密性能が低いと排気ファンを回しても、排気口周辺にある家の隙間から空気を引っ張り込み、通常リビングなどに設ける給気口からは、計画どうりに給気されずに、汚れた空気も排出されないのです。

※ こうした現象を換気経路のショートサーキットと呼びます。

つまり、リビングや寝室などの居室の空気は、正常に換気されにくくなり、汚れたままの空気が滞留してしまうのです。

ただし、季節によっては、隙間があると温度差換気も機能するという、ややこしい現象が発生してしまうのです。

冬は、温度差換気といって、外部と室内の温度差によって、ピューピューと大量の隙間換気が発生するのでは、誰もが経験しており、何となくご理解いただけると思います。

温度差があればあるほど、隙間による冷たい空気が室内に侵入するために、寒くなると多くのユーザーが給気側のシャッターを閉じ、排気ファンも消す方が多いのですが、気密が悪いと、他の部分の隙間からも空気が出入りし、自然と換気が働いてしまうのです。

しかし、隙間による換気量は、部屋や時間帯・温度差・風の有無によっても変わり、非常に不安定で、砂ぼこり・花粉の侵入やすきま風で寒さを感じるなど非常に厄介な存在でもあり、窓やドアに隙間テープなどをはったり、折角のリビング階段にカーテンをして、益々換気を悪くしているユーザーも少なくありません。

一方で、温度差が少ない春から秋にかけては、夏の夜に窓を開けても風がなければ気流を感じないのと同じ様に、たとえ隙間が多くても、温度差がない場合は、風が強くなければ空気の流入は望めず、いくら給気口を開放し、排気ファンを運転しても、計画どうりの換気が機能しないために、室内空気は汚染され続け、健康に、悪影響を及ぼす様々な問題が生じてしまうのです。

特に梅雨から夏にかけての季節は、カビやダニが繁殖しやすい時期でもあり、室温が高くなることで、室内のVOC(揮発性有機化合物)の揮発量も上昇するので、空気の汚染度も高まるのです。

よく、多少隙間があった方が、自然換気が働くからいいという方もおりますが、それは、昔の家のように、隙間だらけで、窓をあけっぱにしていた風通しのいい住宅の場合で、現代の中途半端に気密性の高い住宅で、換気が働いたり、働かなかったりする、隙間換気や窓開け換気に頼ることは出来ないのです。

現代の住いは、サッシや断熱材の普及や、私達の生活スタイルの変化もあって、室内の空気中には、カビの胞子やダニの死骸や糞などのハウスダストに加え、建材や家具・生活用品に含まれる無数の化学物質や汚染物質が蔓延しており、室内の空気は、外の5倍も10倍も汚れていると言われています。

換気の王道は、何といっても窓開け換気ですが、共働きで、日中不在のお宅も多く、外の空気も花粉・PM2.5など汚染物質で汚れており、湿気や雨・風の影響や防犯上の問題もあり、なかなか窓も開けられないという悩ましい側面もあります。

つまり、屋外の空気に含まれる有害物質を除去しつつ、綺麗な空気だけを取り入れる計画換気は、現代の暮らしには必要不可欠とも言えるのです。

気密というと、息苦しくなるというイメージを持たれる方も、未だにいらっしゃいますが、こと換気に関しては、全く逆の話で、気密は換気にとっての生命線でもあるのです。

いずれにしても、年間を通して、2時間に1回の割合で外気を取り入れ、汚れた空気を排出するという健康を維持するために必要とされる換気量を満たすためには、一種換気の場合は、C値1.0以下・3種換気の場合は、0.5以下というのが、高気密・高断熱住宅を長年造りつづけている私達の間では常識であり、換気性能=気密性能ということをご理解いただきたいと思います。

その上で、外が気持ちいいと感じる時は、窓を開け爽やかな空気を存分に室内に取り入れていただきたいのです。

空気清浄機を設置しているご家庭も多くなりましたが、空気清浄機は室内の空気を循環し、フィルターによって、有害物質を吸着させているだけであり、換気機能はなく、あくまで換気のサポートという認識が必要で、フィルターの吸着率が高ければ高いほど目詰まりも起こしやすく頻繁に清掃が必要だという理解も必要です。

また、無垢材や漆喰・珪藻土などの自然素材を使用することで、さも健康住宅と謳っている住宅会社も多いのですが、塗り壁で空気がきれいになるわけではなく、あくまで綺麗な空気の家に塗り壁を使うからこそ、その効果は発揮されるのです。

塗り壁の最大のメリットは、その優れた調湿性にあります。

調湿性というのは、言うまでもなく湿気を吸ったり吐いたりすることですが、実際には、梅雨時や冬場の乾燥期に、長期間、湿気を吸収し続けたり、湿気を吐き続ける魔法のような塗り壁は存在せず、調湿機能に対して過度な期待は避けた方が賢明です。

そして、考えていただきたいのは、湿気を吸収するということは、湿気とともに臭いの元となる空気中の汚染物質も吸着し、湿気を吐くということは、吸着した成分も放出するということで、布製のソファーやクッション・カーテンや寝具など、臭いがつくとなかなか取れないのと同じ考え方を持たねばなりません。

自分の家の臭いには、なかなか気づきませんが、塗り壁の住宅でも、カビや消臭剤の入り混じった異様な臭いのするお宅も多く、カビが生えないとされる漆喰でも、換気や掃除が不十分だと、室内のホコリが壁に付着し、カビが生えてしまう場合もあるのです。

人が体内に取り込む物質を重量比にすると、室内の空気が57%となり、一日あたり平均18キログラムとなり、ペットボトル500ミリリットルに換算すると、3万6千本というから驚きです。

特に、就寝中の空気は、長時間無意識に取り入れることから、ぐっすり眠り、疲れを癒し、免疫を高める意味でも特に重要となります。

ちなみに子供は体重比にすると大人の1.5倍~2倍の空気を摂取しており、肺や免疫の未発達な乳幼児は、目線も低く、空気中のハウスダストや有害物質が溜まりやすい床上50センチ以内の空気を吸ったり、場合によっては手で触れたり、口にいれたりして、アレルギーを発症してしまうケースも少なくないのです。

小さなお子さんや免疫の低下している病人やお年寄りは、普通の方が感じない微量の汚染物質にも敏感に反応してしまう場合があるので注意しなければならないのです。

住宅の素材も大事な要素ですが、常に新鮮な外気を導入し、適度な清掃を心がけ、汚れた空気を常時排出するための家の換気が一番重要となるということを理解しなければなりません。

家の温度差がなく、空気が綺麗で、湿度のコントロールができれば、カビやダニの繁殖も抑え、消臭剤や芳香剤・柔軟剤や防虫剤も必要はなく、空気の汚れがもたらすアレルギーは激減するのではないでしょうか。

私は、住まい塾やセミナーなどで、ストローを使い、家の隙間と換気の関係について、ご理解いただくための実験をお客様にしてもらっています。

実験といっても、ストローにつまようじで、1か所穴を開け、ジュースを飲んでいただくという簡単なものですが、たった1か所、ストローに穴を開けただけで、ズルズルと音を立て上手く飲めません。2ヵ所・3ヵ所あけると、思い切り吸ってもほとんど飲めなくなるのです。

つまり、換気も同様で、家の隙間があると正しく機能しなくなるのです。

2013年に制定されたシックハウス法により、新築時の計画換気は、義務化になっていますが、ほとんどの住宅では、気密性能が蔑ろになっており、必要な換気量が満たされておらず、結果的に、喘息やアトピー・化学物質過敏症などの患者は増加する一方で新たなシックハウスとして、クローズアップされるようになってきました。

ストローの実験は、ご家庭でも、簡単に出来るので、お確かめいただければ気密性能の重要性をご理解いただけると思いますので、一度お試しください。

ご家族の健康を守るためにも室内の空気に目を向けて、健やかな暮らしをお送りください。