2017年12月18日
高気密高断熱なのに隙間風
あるハウスメーカーで新築した読者の方から、「高気密高断熱住宅と言われましたが、隙間風がけっこう凄いんですが、欠陥住宅でしょうか?」との問い合わせがありました。
またまた悩ましい質問です。
※ 隙間風の原因については先日もブログにてご紹介させていただきましたのでこちらをご覧ください。
「はい。その通り欠陥住宅です。」と言いたいところではありますが、そうも言えないのが難しいところです。
そもそも、高気密・高断熱の基準はあってないようなものです。
概ねC値(床面積1㎡あたりの隙間面積)は温暖地で5.0・寒冷地で2.0というのが、一般的にまかり通っている基準のようなものではありますが、実際の建築現場で気密測定を実施している造り手はごく少数で、単にモデルハウスなどの数値を表したり、大体こんなもんだろうという数値を表しているだけに過ぎず、測定の義務化もないために、実際に折角新築しても、隙間風による寒さに悩まされている方は、非常に多いのです。
そもそも2.0以上のC値は恥ずかしくて表に出せない数値でもあり、ユーザーにはもちろん伝えることはなく、カタログやHPでも表していないのがほとんどです。
私も、たまには、他社メーカーのHPも覗いたりしますが、いくら表向きは断熱を強調していても、肝心の気密には触れていない会社がまだまだ多く、こうしたのを見ると「もどきだな」といつも思っています(笑)
つまり、数値を明確にしていない依頼先で家を新築した場合は、大なり小なり隙間風に悩まされることになります。
そして、断熱性能を表すQ値(熱損失係数)やUA値(外皮平均熱貫流率)もまた、昨日紹介したとおりで、住宅性能表示の最高等級といっても、最低限のレベルであり、あくまで計算値にしか過ぎないのです。
※ 昨日のブログを見てない方はどうぞhttp://daitojyutaku.co.jp/log/?l=446528
さて、本題に戻りますが、要するに一口に高気密・高断熱といっても、その性能はピンキリだということを理解しなければなりません。
今回の質問は隙間風ですので、一番大きな影響を及ぼす気密性能の話をしたいと思います。
この表は、気密性能の違いによる換気回数と風の影響を示したグラフです。
例えば、C値が5.0程度の高気密住宅とは言えないようなレベルですと、室内外の温度差が20℃あると、1時間あたり0.33回の隙間による換気作用が働きます。これに風が加わるとその分さらに換気量は増えることになります。
0.33回の換気量と言っても、あまりピンとこないと思いますが、120㎡(約36.5坪)の住宅の家全体の気積は約300立米となりますので、この数字に0.33をかけると99立米となります。
つまり、外が0℃で室内との温度差が20℃あると、1時間あたり99立米もの冷たい空気が隙間から侵入してくるという訳で、実に家全体の気積の3分の1の量となるのです。
これは、無風の状態での換気量で、さらに風向きや風速によって、増加するのです。
そして、これは設置が義務化されている計画換気の1時間当たり0.5回という換気量は考慮していない計算となりますので、換気を運転すれば、下手をすると1時間1回の換気が行われることになり、これまでの隙間の大きい住宅と変わらないほどの換気が働くことになるのです。
こうした住宅は、ほとんどがただ換気が付いてるだけのバッコン式の3種換気というのが、定番となり、寒い時期は換気の吸気口を閉めざろうえなくなるのです。
新築で換気のトラブルが多いのも、こうした要因が非常に大きいのです。
隙間風は、単に不快なばかりか、フィルターも通さず、家の中にホコリや粉塵・汚染物質もダイレクトに侵入することで、掃除も大変で、光熱費の上昇をも招いてしまいます。
このような問題が生じない様にするには、ユーザー自身が、高気密・高断熱のレベルの違いを正しく知って、隙間風などに悩まされないような本物の高気密・高断熱住宅を選択しなければならないのです。
断熱と気密は両輪であり、C値は最低でも1.0以下になるように、依頼先に求め、気密測定を実施してもらうことが非常に大事な事です。
気密性能が悪い住宅は、室内の水蒸気が壁体内に侵入することで、内部結露が危険が高まり、折角の換気システムも穴の開いたストローと同じように、正常に機能しません。
あくまで隙間と温度差がもたらす自然換気は、冬場もしくは、春や秋の朝晩の寒い時期に限っての現象ですので、その他の時期は換気は動いていても、正常に機能しませんのでくれぐれもご注意ください。
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