2017年10月28日
ファンヒーターが厳禁なわけ
電気ヒーターの話題が、ブログにアップされていたので、石油ファンヒーターの話を紹介したいと思います。
築年数の経過した建物や、寒い地域では、まだ多くの方が石油ファンヒーターを利用していると思います。
改めてご説明するまでもなく、ファンヒーターは灯油が燃焼することで、一酸化炭素や二酸化窒素・油に含まれる数多くのVOCなどの有害物質が発生します。また温風が吹き出す事で、床のほこり・カビの胞子・ダニの死骸などを知らず知らずのうちに撒き散らし、アレルギーなどの発症原因にもなるという認識も必要です。
こうした開放型のファンヒーターを暮らしのメイン暖房としている先進国は日本だけと言っても過言ではなく、欧米の人々が、日本のファンヒーターを見たら、「オー・マイ・ゴッド」となるのは間違いありません。
汚れた空気を煙突もつけず室内に排気する事自体が考えられないということです。
【1時間に一度十分な換気を行ってください。】と注意書きがあるのは、健康被害を防止する為の表示以外何物でもありません。
しかし、折角部屋が暖まったのに、窓を頻繁に開けて換気をする人はどの位いるでしょう。多くは喉が痛いとか頭痛がして初めて空気の入れ替えをサッと行うだけだと思います。
健康な方ならいざ知らず、お子さんやお年寄りはもちろん、アトピーや喘息などのアレルギーに悩まされているご家庭ではタブーな暖房とも言えるのです。
それでも、従来の隙間の多い建物の場合は、外気温と室内との温度差によって生じる「隙間換気」が自然に作用しているので、これまでは、深刻な問題にはならなかったの側面もあるのですが、中途半端に気密が進んだ現代の住まいでは、十分な注意が必要で、断熱レベルが高ければ高いほどファンヒーターは厳禁となります。
さらに怖いのが、石油が燃焼した分の水分も必然的に発生することで、温度差のあるガラスや内壁・押入れなどの結露に加え、壁の中や床下・天井裏といった目に見えない躯体内に内部結露を引き起こし、建物の腐朽やシロアリ被害なども助長してしまうのです。
オイルショック以降建てられた日本の住宅が短命なのは、中途半端な気密・断熱と人まかせの換気に加え、不適切な冷暖房の普及に大きな原因があると思います。
前回、乾燥についての説明をさせていただきましたが、20℃の空気の飽和水蒸気量は、空気1立法あたり17グラムとなります。
石油ファンヒーターを稼働させると、機器の出力によって、差はあるものの1時間当たり300グラム~500グラムの水蒸気を発生させます。
どういうことかというと、例えば8畳の部屋の容積は約30立米ですが、飽和水蒸気量(水蒸気を含むことの出来る量)は、30×17=510グラムとなるわけです。
つまり、8畳の締め切った部屋で、換気もせずにファンヒーターをつけたとすると、1時間あたり、最低でも300グラムの水蒸気が発生してしまい、その水蒸気だけで、実に60%の湿度となり、もともと含んでいる水蒸気と合計すると80%にも90%にもなってしまい、たとえ室内が20℃であっても17℃~18℃以下の箇所では、必ず結露が発生するということになります。
実際に発生した水蒸気は、その部屋にとどまらず、寒い部屋や壁体内に移動するので、何時間もつけていると家の温度差のある箇所はもちろん、床下や壁の中・小屋裏まで、家中のいたるどころで結露が発生しまい、カビやダニの繁殖しやすい環境を自らつくっているということも理解しなければなりません。
特に最近では、寒さを解消するために冬の設定温度も高めになりがちで、カビ・ダニといえば、梅雨から9月位までの繁殖時期だったのですが、年中みられるようになり、こうしたことも、アレルギー患者の大きな増加要因にもなっています。
人間が生きていく上で体内に取り込む物質の重量比は、食物・水分・空気で、それぞれの割合は7%・8%・85%。この85%をも占める空気が健康に大きな影響を与えている事を理解しなければなりません。
そして、ファンヒーターを使用しなければ暖まらないような断熱性の低い住宅の多くは、いる場所だけ暖める局所暖房がほとんどで、どうしてもドアを閉めきった生活になってしまい、洗面所や浴室・トイレなどの非暖房室との温度差が10℃以上も生じ、ヒートショックによる心臓や脳疾患の危険性も必然的に高まるのです。
こうした話をすると、ファンヒーターもつけられない危険な家には住みたくないというような???な方もたまにいらっしゃいますが、そういう方にいつも紹介するのが、次の話です。
割と知られていないのですが、国内の、大手電機メーカーは、機器の不具合による事故や不完全燃焼による死亡事故が相次ぎ、2007年のシャープを最後にファンヒーターの製造・販売を打ち切りました。
現在、製造販売を継続しているのは、電機メーカー以外の4社のみです。
大分、不完全燃焼ややけど防止など、性能も大分改善された面もございますが、空気の汚れや結露などの根本的な問題は、改善できないのが実状です。
そして、石油が燃焼するということは、酸素を消費し、二酸化炭素を排出するわけで、人の呼吸による酸素の消費と二酸化炭素の排出が重なってしまい空気が常に汚れてしまうのです。
新築住宅でも、エアコンでは暖まらないということで、ファンヒーターを利用する方も少なからずいるようですが、実際に多くの問題が発生しており、寒さ以上に、燃焼ガスや結露によって、住む人の健康にも、重大な悪影響を及ぼすということをご理解いただきたいと思います。
家族の命と健康を守るべき住まいが、健康を蝕み、病気や事故を誘発する場であってはならないのです。
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