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エアコン規格の摩訶不思議

エアコンの選定をする場合、畳数表示を目安にする方がほとんどだと思いますが、この規格は、無断熱で隙間だらけの住宅が、大半だった1964年に業界団体が統一の基準を決めてから、50年以上経過した現在でも、同じ規格だということをご存知でしたでしょうか。

グラフを見てわかる通り、国内には4割ほどの無断熱住宅もあり、気密や断熱の不十分な住宅も多く、エアコンが効かないというクレーム防止のために、変更していないというのが、建前のようですが、何も知らずに、台数を余計に買わされたり、オーバースペックのエアコンを買わされないように注意しなければなりません。

こうした表示も、無断熱に近い隙間だらけの古い住宅を基準にしているのです。

参考までに、このエアコン表示の見方を紹介します。

左上にある期間消費電力量は、東京をモデルとし、 設定室内温度は、 冷房時27℃/暖房時20℃ で、冷房期間は5月23日~10月4日・暖房期間は11月8日~4月16日 です。そして使用時間: 6:00~24:00の18時間 の使用量の目安で、暖房使用時の外気温の設定は7℃です。

※ 宮城の場合は、地域係数という基準では、1.6となっているので、この数字の1.6倍が目安となります。

つまり、期間消費電力586Kw×27円=15,822円が東京での電気料金の目安となり、宮城県では1.6倍にして25,315円というのが、大まかな目安となりますが、この数字は気密や断熱性能の不十分な古い建物の目安で、性能の高い高気密・高断熱住宅の場合、5分の1位になりますので、年間5,000前後の電気料金となります。

右上にある7.2という数字は、APFという通年エネルギー消費効率で、冷房と暖房を併せた消費効率を指しており、1の消費エネルギーに対して、7.2倍の能力を発揮する機種ということで、数字が大きければ大きいほど省エネ性が高いということになります。

※ ソーラーサーキットの家では、APFの数値よりも、冷房をあまり必要としないため暖房COPという暖房効率の高い機種を選定しております。

次に冷房(2.2KW)と暖房時(2.5KW)の能力が表示されておりますが、定格時の能力で、この能力を発揮するための1時間当たりの消費電力が、右側に表示されています。下段の数字は、最低と最高の数字となっており、例えばこのエアコンの場合0.3KWから5.9KWまで対応ができますが、5.9KWのフルパワーで運転すると、1480Wの消費電力を必要とするということで、エネルギー効率は悪くなってしまいます。

※ エアコンは定格時の運転が一番消費電力が少ないように設計されています。

そして、左下にある4.5KWの表示ですが、外気温2℃の場合に必要な容量を明示しているというわけです。

※ 2℃というと、仙台の真冬の温度になるので、宮城で、断熱が不十分な住宅の場合は、6畳間に、6畳用のエアコンをフルパワーで、つけてもなかなか暖まらず、電気代もかなり高額になるということです。

私が、簡易的に、エアコンの必要能力を計算する方法として、用いるのは

Q値(住宅の熱損失係数)×部屋の大きさ×25℃(冬期間の部屋の温度ー最低気温)です。

※ 宮城の場合だと、冬季の最低温度は―5℃位ですので、室温を20℃にして温度差を25℃で計算しています。

ソーラーサーキットの標準仕様のQ値は約1.5位ですので、6畳の広さを暖房する場合、1.5×9.9×25=371Wとなりますので、計算上は、400Wの熱量で十分となります。

つまり、ハロゲンヒーターの弱運転(500W)で十分という事になり、逆に暑くなります。

ただ、ハロゲンヒーターなどの電気式の暖房器は、エネルギー効率は、1に対してあくまで1ですので、500Wの出力するハロゲンヒーターも、電気代にすると1時間あたり(1KW)27円で計算)13.5円かかるのに対し、上記の6畳用エアコンだと150W位の消費電力で済むので、4円位でOKとなります。(割安な夜間電力だと1.5円位)

この辺が、昨今のヒートポンプエアコンの優秀さという訳です。

ちなみに、120㎡(36.3坪)+16.5㎡(5坪の小屋裏)程度の大きさの建物の場合は、

1.5×136.5×25=5118Wとなり、計算上は2.2KWと2.8KWのエアコン1台ずつで、家中の熱源が、ほぼ間に合う計算になります。

※ ハイスペック仕様だと、1.3×136.5×25=4436Wとなります。

住宅の場合、部屋間の間仕切りも多いので、、少し余裕をみて1Fに4KW(14畳用)+2Fに2.8KW(10畳用)で、合計6.8KWのエアコンを設置しているのが通例で、間欠運転ではなく、24時間連続運転しても、年間の冷暖房費は、十分6万以内で収まるのです。

ただ、注意しなければならないのが、C値(家の隙間面積)で、いくら新築で、省エネ基準を満たしていても、C値が、1.0を超え、2とか3とか5とかのレベルになると、暖められた空気が逃げていき、足元から冷たい空気を引っ張り込みますので、2割~5割増しのエアコンの容量が必要となり、設定温度も高くなることで、光熱費はもちろん、運転音や風量などが気になったり、露点温度も上がる事で、結露が発生しやすくなったり、様々な不具合が起きてきます。

よく、建売やローコスト住宅などを購入なされた方が、エアコンでは暖まらない・暖房費が高いという声が多いのは、断熱性能もさることながら、気密性能も低いからで、換気を消したり、電気ストーブやホットカーペット・中には禁断のファンヒーターを使用してしまい、結露に悩んでいる方も多いのが現状です。

一方で、大手メーカーなどでは、こうしたクレームを避けるために、全館空調システムや床暖房システムをセットする手法がよく見られますが、多額のイニシャルコストとランニングコストを覚悟しなければなりません。

よく、新築でも、入浴するのに、寒くて換気を消すという方も多いようですが、こういう話を聞くと本当に悲しくなってしまいます。

※ 浴室暖房乾燥機を必ず勧めるのもこうした理由です。

参考までに、3年後に義務化となる省エネ基準のQ値2.4(UA値で0.75)で計算してみましょう。

※ 現在、新築されている住宅でも、70%~80%が大体このレベルです。

2.4×136.5×25=8190Wとなります。

こうした住宅のC値は、概ね5.0というのが、相場ですので、5割ほどの割り増しをして計算しなければならず、8190W×1.5=12285Wとなり、最低でも2.8KW(10畳用)のエアコンが4.5台は、必要になるわけです。

こうなると、機器代のイニシャルコストもさることながら、ランニングコスト的にも、全館暖房にはとても不向きで、いる所だけ暖める局所暖房となり、部屋間の温度差も最低でも7℃から10℃と広がり、寒い箇所や躯体内で、結露が発生してしまうのは、ある意味しようがないのです。

しかも、この数値は新築時のもので、経年劣化により、徐々に低下していくことも理解しなければなりません。

建売であれ、注文住宅であれ、多くは、エアコン暖房が基本となりますが、気密と断熱が不十分だと必ずこうした不具合が必ずつきまといますので、くれぐれもご注意ください。