2017年3月26日
内断熱(充填断熱)の抱える危険要素①
〇熱橋(ヒートブリッジ)の影響による熱損失
内断熱の最大の欠点は、何といっても構造躯体そのものが、非断熱部分となることで、室内と室外の温度差の激しい季節においては、熱橋(ヒートブリッジ)という文字どうり熱を伝える橋となります。
木造であれ、ツーバイであれ、鉄骨であれ、構造材は、基本的には断熱材ではないので、おのずと非断熱部分(全体の20%前後)となり、熱橋の影響により熱損失が大きいものになります。
つまり、冬は、室内熱の損失を助長し、夏は40℃近くもなる外壁の裏側から、熱を室内に侵入させる要因となります。
そして、熱損失は、住み心地の悪さや光熱費の上昇に影響を及ぼしますが、それより怖いのは、温度差によって発生する壁体内結露による構造の腐朽であり、長期間、熱による収縮と膨張を繰り返すことで、狂いや痩せ・割れといった構造の変形・毀損を招き、年々、劣化が進み、耐震性の低下につながるのです。
昨年4月の熊本地震において、旧耐震の住宅のみならず、新耐震基準の住宅の多くが、半壊や全壊の被害を受けましたが、こうした経年劣化による耐震性の低下も大きな要因となっています。
参考までに、主な建築材料や断熱材の熱伝導率を比較してみましょう。
<建築材料>
〇 杉・ヒノキ0.12W/mK
〇 軽量気泡コンクリート0.17W/mK
〇 コンクリート1.6W/mK
〇 鋼材53 W/(m K)W/mK)
<断熱材>
〇 グラスウール16K0.046 W/mK
〇 高性能グラスウール24K0.036W/mK
〇 吹き込み用グラスウールGW-1- 0.052 W/mK・30K相当 0.04 W/mK
〇 ロックウール0.038W/mK
〇 ポリスチレン3種0.028W/mK
〇 ソーラーサーキット断熱材0.024W/mK
鉄骨の熱電導率は大きすぎて、比較するまでもございませんが、断熱性がある程度有する木材でも、熱伝導率は0.12W/mKと大きいのがお分かり頂けると思います。
そして、この熱伝導率を用いて、各材料の熱の抵抗値を算出することが出来ます。
熱抵抗値とは、材料の熱の伝わりにくさを表す値です。
裏表に1℃の温度差がある場合に、ある厚さの材料の中を、面積1㎡あたり、1秒間に伝わる熱量の逆数で、当然、値が大きい程、熱が伝わりにくく、断熱性能が高いということになります。
熱抵抗値(m2・ K/W )は、材料の厚さ[m]÷熱伝導率W/(m・K)で求められます。
例えば、柱3寸5分(10.5㎝)の場合は、0.105÷0.12=0.875(m2・ K/W)の熱抵抗値となり、グラスウール16Kで厚さ100mmの断熱材の熱抵抗値は、0.10÷0.046=2.17m2・ K/Wとなります。
つまり、グラスウール断熱材2.17m2・ K/Wと、同等の性能を柱に求めると、2.17(熱抵抗値)×0.12(木の熱伝導率)=0.26 となり、柱は、26㎝角(7.5寸)の太さが必要で現実的ではありません。
要するに、内断熱の場合、壁内部は、熱抵抗値2.17m2・ K/Wの断熱部分と熱抵抗値0.875m2・ K/Wの構造部分が混在しており、将来、目に見えない壁の中で、様々な不具合が生じることは、ご理解いただけるのではないでしょうか。
ちなみに、標準のソーラーサーキットの熱抵抗値は、0.06÷0.024=2.5m2・ K/Wとなります。
もちろん、外断熱ですので、熱橋の影響は受ける事なく、高い断熱性能が長期間発揮され、構造部分の性能も、オマケ程度ですが、逆に付加されるということになります。
少々、複雑で面倒な話になってしまいましたが、新築時の住宅性能を長期間発揮する為にも、断熱方法は非常に大事で、重要なポイントとなりますので、是非ご理解いただければ幸いです。
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