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健康・省エネシンポジウムに参加して

先日、開催されたシンポジウムで、(一社)健康・省エネ住宅を推進する国民会議の上原理事長の講演内容を一部紹介いたします。

これまでの地道な取り組みの中で、人の健康と家の断熱性能の関連性についてのエビデンス(根拠)も大分揃ってきたようです。

○温度差のある家での、冬の入浴時における血圧の変動推移

○住宅内での循環器系疾患(心疾患・脳疾患)による死亡事故の季節変動

○入浴中に亡くなられた方の季節変動

○冬季間の死亡率増加の県別比較

等々の紹介がございましたが、興味深かったのが、一番寒い北海道が、冬の死亡増加率が全国最低ということで、家の断熱化が一番進んでいるとはいえ、一番暖かい沖縄より少ないというのは驚きでした。

交通事故による悲惨なニュースは絶えませんが、交通事故による死者数は16年連続で減少しており、平成28年度には3,904人となりました。

その反面、急速に進む高齢化にともない、年々急激に増加しているのが、浴室内の不慮の事故死で、年間で推定17,000人もの方が亡くなっています。

しかも、その死因の半数ほどは、浴槽内での溺死というから驚きです。

また浴室以外でも温度差のあるトイレや洗面・廊下などでも同様の事故は多く、この何倍もの悲しい事故が家の温度差によって引き起こされているのです。

そして、真剣に考えなければいけないのが、死に至らないまでも、数多くの方々が後遺症に苦しんでらっしゃるということです。

さらに事故後の状況は、本人もさることながら、ご家族が精神的にも肉体的にも経済的にも大きな負担を強いられた生活を送らなければならないという現実を理解しなければならないのです。

こうした事故にあう危険性は、血管が弱くなってくる高齢者の方に特に多いのですが,

ご自身やご家族も含め、人間誰しもが必ず年を重ねていく事をリアルに考えていくことも必要です。

お風呂や洗面所に暖房などを設置しているお宅も増えては来てますが、廊下やトイレ・玄関や勝手口など家中を万遍なく暖めるのには、現実的には非常に難しいことです。

僅かの暖房費で、家の隅々まで温度差が少ない断熱性能の高い暖かい家で暮らすことは、こうした悲しい事故のリスクを抑え、未然に防ぐためにも、非常に大事なことです。

ご存知のように、バリアフリー住宅とは、住宅内の段差を無くすことによって、高齢者や身障者の方々が、日常の生活に支障なく暮らせるよう配慮した住宅のことをいいますが、単に室内の段差を無くし、廊下や出入口の幅を広くし、手すりなどを設ければバリアフリー住宅と言えるのでしょうか。

もちろん、段差にも配慮は必要ですが、段差以上に怖いのが部屋間の温度差や結露・湿気であり、それらによって繁殖するカビやダニ、その他の化学物質や汚染物質で蔓延する室内の空気です。

温度差のない、きれいな空気に満たされた室内環境の中で暮らすことによって、人は健康で長生きできるのです。

またこうした環境であれば、将来万が一介護を余儀なくされた場合、介護を受ける側の方にとっても、介護する側の方にとっても、介護に適した環境となり、介護で生じる様々な負担を軽減してくれるのです。

段差のないバリアフリーに加え、温度のバリア・空気のバリアのない健康な住まいが、真のバリアフリ―住宅といえるのです。

真のバリアフリー住宅がご家族とご自身の健康と大事な命を守るのです。