2024年5月6日
なぜ外断熱にこだわっているか?
保険や金融、医療においても自己責任が問われる時代ですが、住宅選びにも、正しい知識に基づいた自己判断が必要であり、間違った判断により生じたリスクは、結果的に自己責任となります。
住宅にも潜在的に潜む様々なリスクがありますが、内部結露による住宅の腐朽やシロアリ被害は、この最たるもので、僅か10年の瑕疵担保保険の対象からも、除外されているのです。
マイホームを取得する多くのお客様は、長期の住宅ローンを利用しますが、もし、ローンを完済する10年も20年も前に、家が住めない状態になり、その価値を失うことになったらまさに悲劇なのです。
新築で、そんな悲劇は?という方も多いのですが、こうした問題は表面化しないだけで、多くの方々が、被害に遭遇し、悩み苦しんでいるという現実も理解しなければならず、こうした悲劇に遭遇しないためにも、リスクとなりうる要素を取り除いた家づくりを進めなければならないのです。
家を高気密・高断熱化するというのは、単に省エネ性と快適性を高めるばかりではなく、住む人の健康を守り、建物の長寿命化を図る大きな目的があります。
室内空気と温熱環境に優れた住まいは、私達の健康寿命を伸ばすことで、病気で生じる心身並びに経済的な負担を軽減し、年々急増する国の社会保障支出の抑制にもつながります。
そして、将来、在宅介護が必要な場合においても、介護を受ける側・介護をする側、双方が介護で生じる様々なストレスを軽減し、心の通った介護が行える様になります。
また、光熱費や修繕費などのランニングコストも含めたライフサイクルコスト全体を軽減させる事で、今後の年金支給の延長や縮小に備えた、老後の人生設計も可能となるのです。
さらに、脱炭素社会の形成に向け、暮らしにおけるエネルギー消費はもとより、解体時に発生する莫大な量の産業廃棄物を減少させることで、焼却によるCO2の削減や行き場のない処分場の問題解消にもつながり、広い意味で地球環境に対しても大きく貢献出来る様になるのです。
つまり、高度成長時代のいわゆるつくっては壊すといったスクラップ&ビルドの考え方から、「いいものをつくってきちんと手入れして長く大切に使う」 というストック型の社会の形成にも寄与できるのです。
人口減少が急速に進行していく中で、現在、空き家が急増し大きな社会問題となっているように、土地という資産は一部の商業地や利便性の高い物件をのぞきその価値は低下していくものと思われます。
築25年程度で、資産価値がゼロとなり、耐震性や住み心地が大きく損なわれるような従来の住宅では、子供や孫に引き継ぐ時には、貸すことも住むことも売ることも出来ず、莫大な解体費だけが科せられる、言わば資産ではなく負債となってしまう時代がそこまで迫っているのです。
弊社は、「いつまでも強く・いつまでも快適に」をコンセプトとして、住む人と建物の健康をいつまでも守り、50年後も価値ある家づくりを目指して、家づくりに取り組んで参りました。
つまり、50年後も家としての基本的な性能を保持することで、一生涯、安心して暮らせる家となり、将来、お子さんやお孫さんの家としても引き継げ、住み替えをする場合でも、賃貸や売却も可能な価値ある資産として活用できる家にしたいのです。
こうした想いを実現させるためには、新築時の住宅性能を長期間にわたり保持させることが、何より重要となります。
少々、前置きが長くなりましたが、私達人間も年齢を重ねるごとに、老化が進むように、建物も経年による劣化が当然すすんでいきます。
内装や外装、設備などは劣化の具合により、補修や交換は可能です。
しかし、目に見えない構造部分は簡単に補修や交換は出来ないのです。
家の基本的かつ最も大事な性能である、耐震性や気密・断熱性能はもとより、これらの性能に大きく左右される住み心地の良さを長期間にわたり、保持させるには、目に見えない構造部分の経年劣化を、耐用年数や健康への影響も危惧される、薬剤などに頼らずに抑えなければなりません。
年間に5.6棟の現場であれば、従来の充填断熱でも丁寧な気密・断熱工事を実施し、お客様が適切な暮らし方をすれば高耐久な住まいは実現します。
しかしながら、年に30棟から40棟のご依頼を頂戴する弊社では、内断熱の建物では、全ての現場で品質や性能のバラツキの出ない施工と管理は難しく、地元の住宅会社の経営者として、お客様に対し責任ある家造りをお約束出来ないのです。
その点、気密や断熱ラインが構造の外側で連続する外断熱の家は、構造体の中に結露が発生する露点温度となる危険性がほぼ皆無であり、さらに構造内部に通気性を持たせ、湿気や熱気をも外部に排出させることで、木造住宅の耐久性を飛躍的に向上させるのです。
要するに、外断熱の家は、誰がみても非常に理にかなった工法であり、会社のスタッフ・協力業者・現場で施工にあたる職人さんにいたるまで、意識の統一が図られ、心から納得できる工法です。
つまり、内部結露の危険性や気密の重要性・断熱の仕組みを正しく理解することで、業界にありがちだった、現場による品質のバラつきがなくなり、全てのお客様にご満足いただける建物が提供する事が出来るのです。
外断熱は、施工の品質や精度も、工程ごとに実施する検査や気密測定によって一目瞭然となり、施工不良も起きにくく、万一あったとしても、見過ごしたりやり過ごしたりせずに、改善が可能な工法でもあります。
ところが、充填断熱の気密・断熱工事に費やす手間や費用は、コストや工期優先の業界にあって、どうしても見過ごされやすい部分でもあるのです。
そして残念なことに、たかが内部結露という旧態依然の考え方をする人々が、まだ多く、気密や断熱、通気や換気の重要性を認識している方が、造り手にも消費者にも少ないというのが悲しい現実なのです。
こうした点も踏まえ、弊社では内断熱ではなく、外断熱の家づくりに長年取り組んでいるのということを是非ご理解いただきたいと思います。
- 高橋一夫