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工事中でも発生?W断熱(付加断熱)の夏型結露

日経ホームビルダーの過去掲載記事です。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)推進の流れもあって、ハウスメーカー各社が、計算上のUA値(外皮平均熱貫流率)を向上させるために、W断熱(内断熱+外断熱)と称した断熱手法を導入しています。

拙著「外断熱が家族を守る」の中でも、W断熱の注意点について、説明していますので、ここでは割愛させていただきますが、宮城県内の現場でも、付加断熱の新たな危険性が紹介されています。

この時期の、施工中の問題といえば、外部がまだ囲われない状態、つまり建て方中に降る雨ということになります。

事前に、予報で分かっていれば、ある程度の対応が可能ですが、突然スコールのように降り出す雨については、対処が困難で、材料が濡れてしまうケースがあります。

もちろん、木材や床板などの資材は、雨にあたっても、濡れるのは表面だけで、乾燥すれば問題はないのですが、今回のケースでは、木材や床板に加え、基礎内部にも水が溜まり、重大な問題が発生しました。

乾かした後であれば、問題は生じなかったと思いますが、工期の問題なのか、もしくは水蒸気や透湿・結露に対しての認識が不足していたのかは不明ですが、基礎や材料が乾かないうちに、断熱材を充填し、外部の構造用合板と外断熱材を張り、室内側に防湿フイルムを施工してしまったのです。

おそらくは、手抜きとかという認識は、なかったと思うのですが、基礎や材料から、蒸発した水蒸気は、断熱材に吸収されてしまい、7月という時期的なこともあり、外気温とともに壁の中の温度も上昇し、蒸し返しの状態となり、断熱材に含まれた湿気の逃げ場はなく、夜間に建物内が冷やされて、気密フイルムの内側に逆転結露が、発生したというわけです。

検査機関の調査の結果、壁内部の温度が29℃で湿度が84%だったようでが、その場合の露点温度は26.5℃となるので、夜間から早朝にかけて建物内の温度が26,5度以下になれば必然的に結露が発生するのです。

※ 冬の結露は、ガラス面などの室内側に表れることが多いので、表面結露と言いますが、夏の結露は、逆に裏側に起きる為に逆転結露といいます。

こうした現象は、高気密・高断熱の経験豊富な造り手にとっては、十分予測できることなのですが、理解している現場の管理者や職人さんは、まだまだ少なく、実際の現場では、的確な判断が出来ないのも、ある意味仕方ないかと思い読んでいたのですが・・・。

しかし、この現場では、書籍でも指摘している重大な問題があったのです。

それは、水蒸気分圧について、正しく理解していない造り手が、間違った断熱材の使い方をしているために、必然的に発生した現象なのです。

通常、内断熱の場合、室内側から壁体内への水蒸気の移動を防ぐために、防湿フイルムを施工しますが、水蒸気の粒子は10万分の2ミリという微粒子のため、大なり小なり壁体内に侵入し、場合によっては、内部結露を引き起こす要因ともなります。

その為に、侵入した水蒸気を速やかに外部へ逃がす必要があり、構造の外側に防水透湿シートを張るのがこれまでの一般的な施工法です。

しかし、今回の現場は、透湿性の高い繊維系の断熱材を充填し、その外側に、逆に透湿性の低いポリスチレンボードを施工したため、断熱材が吸収した水蒸気は、壁の中で逃げ場を無くし、温度の低くなった夜間から早朝にかけ、室温が露点以下となり、防湿フイルムの内側に結露が発生したと思われるのです。

宮城県の事例ということもあり、これ以上の説明は控えさせていただきますが、いずれにしても、W断熱(付加断熱)の基本は、充填する断熱材よりも透湿性が高い断熱材を外側に施工することが、最も重要で、こうした間違ったW断熱は、理論的にも、水蒸気が、壁の中でせき止められ、冬場も結露が発生する危険性が生じてしまいます。

今回の結露が、どうした経緯で発見されたのかはわかりませんが、内装材を仕上げる前に発見されたのが、不幸中の幸いで、フイルム等をはがし、完全に乾燥してから、工事を再開したようです。

外断熱の場合は、こうした問題はほぼ起こりえないので、まずは安心ですが、もしこのまま内装材を施工していたら、後々、様々な不具合が発生しただろうと予測されるので本当に怖い話です。

そもそも、壁内一杯に断熱材を充填するW断熱は、梅雨がなく、室内外の温度差が30℃も40℃もある北海道等の寒冷地から、普及してきた断熱方法で、温度差が20℃~25℃しかない宮城県(特に中心部)においては、あまり必要がないのです。

弊社のZEH仕様のUa値は、HEAT20のGⅠグレードで0.46・G2グレードで0.34・G3グレードで0.23ですが、ZEH基準も大幅に上回る性能値に加え、確かな断熱施工と気密性によって、計算値以上の性能を発揮する為、過度に性能をアップさせても、体感的な冬の暖かさは変わらず、年間にして、10,000前後の暖房費が減少するだけで、建築コストを考えればメリットは少ないとも言えるのです。

さらに付け加えれば、断熱材を内側に付加すればするほど、外断熱の最大のメリットでもある、通気性を損ない、かえって夏場の熱ごもりにより、エアコンの負荷が高まり、逆に夏はもちろん、中間期の冷房コストが暖房費の削減以上に、上昇する可能性もあるので、建設地の環境や建物の規模や間取り、生活スタイルやご予算等を考慮しながら、ご提案をさせていただいている次第です。

大事なのは、見た目の計算値ではなく、計算値どうりの性能が、発揮される確かな断熱施工と気密施工です。

そして、その性能が経年劣化することなく、将来も保持される家なのかどうかという事を考えていただきたいのです。

以上、簡単に説明させていただきましたが、何かご不明な点などございましたら、何なりとお申し付け下さい。